「おいっ、大丈夫かっ」

緊迫感のある声に、ハッと目を見開く。

俺はおじいさんを腹の上に乗せ、路上に倒れていた。

上から相良先輩の美しい顔が覗いている。

「はい……おじいさん、大丈夫ですか」

トントンと肩を叩くと、おじいさんはのっそりと起き上がった。

「あいててて」

転がっていた杖をつかみ、おじいさんはなんとか立ち上がる。

そしてあろうことか、座ったままの俺をにらみつけた。

「もう少しで渡れたのに、余計なことをしおって」

「え……」

帽子をかぶり、ジャケットを着たおじいさんは、ふんと鼻を鳴らした。

いやあの……だいぶヨボヨボしていて危なかったんですけど。

俺のせいで転んだとでも言いたげだ。

呆然としていると、相良先輩がなにもなかったように歩いていこうとするおじいさんの肩を掴んだ。

「おい、ジジイ」

金髪イケメンにすごまれても、おじいさんはたじろがない。

「お前な、自分ではシャキシャキ歩けてるつもりかもしれねえけど、はたから見たら死にかけのヨボヨボだからな」
「なんだあ? お前は」
「うっせえこの老害! こいつに謝れっ」