桜の花にはまだ微妙に早い。

高校の入学式で、俺はキョロキョロしていた。

中学までは学ランだったので、ブレザーやネクタイにまだ慣れない。

誰もがなにかを期待しているような、ソワソワした空気に飲まれる。

「はい、新入生はあっちだよ」

校門付近の受付で胸に花飾りをつけられる。

保護者は体育館、新入生は教室に入らねばならないので、校舎の入り口で母と別れた。

貼り出されたクラス分け表には、知らない名前ばかり。

俺がなぜこの高校を選んだかと言うと、相良さんがここに進学したという情報を手に入れたからだ。

中三のとき、親に半強制的に入れられた塾に相良さんと同じ中学の後輩がおり、その人に聞いた。

相良さんと剣道をしたい。

ただその一心で、俺はこの学校へ来た。

中学の時は学年も学校も違ったからなかなか話せなかったけど、同じ学校なら……。