相良先生へ


 この手紙は、俺の最期のお願いです。
 俺になにかがあった時は、俺の目を、同じクラスの『鈴木若葉』という女の子に提供してください。
 俺、若葉には、夢を諦めてほしくないんです。

 俺と彼女は、多分、双子です。
 若葉も俺と同じ乳児院に預けられていたらしいんです。
 苗字も誕生日も血液型も、生まれたところも同じ。
 預けられた時期は違うけど、こんな偶然はないと思う。
 血縁関係があるなら、俺の目を受け入れても、拒絶反応も少ないと思うから、きっと若葉の夢を繋いであげられるはず。

 俺にはもう時間がありません。
 だからこそ、若葉には、俺の分まで幸せに生きてほしい。
 若葉が光を取り戻した先の未来が、明るいものであってほしい。
 だから、俺の目をあげることも、全部全部、若葉には伝えないでください。
 ワガママですみません。

 相良先生。
 先生からたくさん貰ったのに、なにも返せなくて、ごめんなさい。
 でも、これは全部全部、俺が自分の意思で決めたことだから。
 きっと、これが俺が生まれてきた意味なんだと思うんです。

 だけど
 俺、先生と、一緒にお酒飲みたかったな。

 先生も、体に気を付けて。
 たくさんたくさん、ありがとうございました。


 雪也