まず、必要な備品の手配から始まる。隼人は他の実行委員たちと共にリストを作成し、必要な道具や資材を確認していった。
しかし、実行委員のメンバーは少ない上、運動会の過去の失敗から「魔の実行委員」と呼ばれるこの委員会に対する恐れもあってか、周囲の協力を得るのは容易ではなかった。
「えっと、まずはコーンとハードル、そして競技用のボールも必要だよね」
と隼人は声をかけたが、他の委員たちはすでに疲れた様子で、
「それ、どこから手配するの?」
と疑問の目を向けてきた。
「学校の備品室から借りればいいんじゃない?」
隼人は自信を持って提案したが、純が
「でも、毎年実行委員会が手配するのは大変だから、先生たちが引き受けてくれないことが多いよ」
と指摘する。
「そうだよね。じゃあ、少しでも頼んでみよう。これから運動会を成功させるためには、私たちが頑張らなきゃ」
と隼人は言ったが、内心の不安は消えなかった。
数日後、隼人たちは運動会の準備会議を開くことになった。しかし、参加者は予想以上に少なく、6人の実行委員の中でもさらに欠席者が出た。
「これじゃあ、何も決まらないよ…」
と隼人はため息をつく。純が隼人の隣で小さく
「僕も何か手伝うよ」
と言ったのが、彼の心に少しの勇気を与えてくれた。
それでも運動会までのスケジュールを組むのは難題だった。練習の時間や日程の調整は、部活動や他の行事と重なり、メンバー全員が集まることはほとんどできなかった。
「今週末に全員集まれるのは難しいかな…?」
隼人はみんなに尋ねたが、期待に反してほとんどのメンバーが首を振った。
「じゃあ、どうしよう…」
隼人は頭を抱えた。その時、純が立ち上がり、勇気を振り絞って言った。
「隼人、僕が個別に練習の時間を調整するのを手伝うよ。もし他の人たちが集まれないなら、個別に教え合う形でもいいと思う」
その言葉に隼人は心を打たれた。
「本当に?それなら、一緒に練習を進めよう!」
と隼人は彼に感謝の気持ちを伝えた。純は微笑んで、隼人の隣で頑張る決意を見せた。
こうして、隼人と純は他の実行委員の状況を考慮しながら、個々の練習時間を調整し始めた。
特に純は、他の生徒に声をかけたり、練習の際には必ず一緒に行動するよう心がけていた。隼人も彼の行動に刺激を受け、自分も頑張らなければと思った。
「ねえ、力弥にお願いしてもいいかな?」
純が言うと、隼人はドキリとした。実行委員の中でも力弥はリーダーシップがあったが、彼が本当に手伝ってくれるかどうかはわからなかった。
「それ、どうだろう…でも、頼んでみる価値はあるよね」
と隼人は頷いた。純の提案を受けて、隼人は思い切って力弥に連絡を取ることにした。
「やっぱり僕たちの運動会を成功させたい!」
と、隼人は心に誓った。力弥が参加してくれれば、彼の存在が実行委員全体の士気を高めるに違いない。
運動会当日まで、隼人と純は自分たちの力で少しずつでも進めていこうと心に決めた。周囲の期待や不安を抱えながらも、隼人は自分の心の奥で力弥に向ける思いを胸に秘めつつ、実行委員としての責務を全うすることを誓った。
「たとえどんな困難が待ち受けていても、絶対に運動会を成功させるんだ」
と、隼人は純に向かって微笑みながら言った。彼はその言葉が、運動会を成功させるためのエネルギーとなることを信じていた。