運動会の後、夕日がグラウンドをオレンジ色に染める中、隼人は一息ついていた。皆が楽しそうに談笑する様子を見ながら、自分がリーダーとしてここまで導いたことに静かな満足感を抱いていた。
　しかし同時に、力弥への自分の想いを振り返ると、どこか「自分よがり」だったと感じずにはいられない。力弥のために動いていたつもりが、結局は自分の感情を優先していたことに気づき、隼人は少し複雑な気持ちで胸を締め付けられた。

　その時、純が隼人の隣にそっと座った。
「今日、隼人は本当にすごかったよ。みんな、君のおかげで運動会がこんなに楽しくなったって言ってる」と純は優しく微笑みかける。隼人は少し照れくさそうに笑って
「ありがとう、純。君もすごく助けてくれたよ」
と応えた。

　純はしばらく無言で隼人の横顔を見つめていたが、やがて静かに口を開いた。
「隼人、僕は…君のことがずっと好きなんだ」
その言葉に、隼人は一瞬驚き、言葉を失った。純の真剣な眼差しに、今まで気づいていたはずの純の想いが、改めて重く心に響いた。

　「純…」
隼人はどう返すべきか考えながらも、自分が力弥に向けていた気持ちと、純が自分に向けている気持ちの違いに戸惑いを感じた。それでも、純の想いを軽んじることはできなかった。
「僕…今は力弥に夢中だけど、純が大切な存在だってことは間違いないよ」
と静かに答えた。

　純は隼人の言葉に寂しげに微笑んだが、それでも「ありがとう」
と返した。隼人の心には、純の誠実な気持ちが深く刻まれた。

　遠くで力弥が他のクラスメイトと笑い合っているのを見つめる隼人。彼はまだ手の届かない存在のように思えるけれど、それでも今日の運動会を通じて、少しでも彼に近づけたという実感がある。その事実が、隼人の胸に温かい光を灯した。

　隼人のそばで、純はその様子をじっと見守っていた。自分の気持ちが伝わっても、隼人の心がまだ力弥に向いていることを理解しながらも、彼は隼人のそばにいられることが何より嬉しかった。そして、いつか隼人が自分に目を向けてくれる日を、静かに待ち続ける決意を胸に秘めていた。

　夕暮れの中、隼人は改めて大きく息を吸い込んだ。自分の想い、そして周りの人々の想いが交錯する中でも、これからの未来に向けて一歩ずつ進んでいく決意が固まっていく。恋の行方はまだ分からないけれど、隼人はこの先も皆と共に前を向いて歩いていけると確信していた。

　「次はどうなるかな？」
隼人はふと、未来を思い描きながら、力弥の笑顔を目に焼き付けた。そして、純の隣で微笑みながら、これからも続く物語の始まりを感じていた。

終