真珠、遅いな。
墨北湾の浴岸で9月中ばに行われ
る夏祭りに真珠と行くことになった。
なのに、
「真珠、どこほっつきあるいてんだよ」夏珠が一向に姿を見せない。
周りは浴方姿のカップルや家族連れでとてもにぎわっている。
見つけられずに困っているかもしれないと思って、俺はメールを送った。
『どこにいる?』
すぐに返信がきた。
『今ついたとこ。』
そう書かれたメッセージを見てふと顔を上げると、
浴衣姿の真珠が目の前にいた。
「どう?」
そう言ってはにかむ彼女は夕日に照らされとても輝いて見えた。
「いいと思う」
小声でそう言うと、
「きこえなかった、もう一回〜」と、からからような声がきこえた。
「あー、そう言えば近くに美味しい屋台があったんだ!」
話を逸らすためについ口からそう言葉が出た。すると、
「え!どこ?どこ??」
と、思ったよりもいい反応が返ってきた。
「えーっと、、」
でまかせで言ったから適当な屋台を指差して、
「あそこだよ、あそこ!」
と言うと、真珠は一目散に走って行った。