2003年9月23日。
「うわぁぁぁん!お父さぁん、お母さぁんどこぉおー」
小学3年生。俺ーー宮治透也《みやじとうや》は家出した。今ではなぜ家出をしたのかすから思い出せない。何も考えられなくて、走って、走って、走って。気がついたら、とても大きな海の砂浜まできていた。
「きれい…」
そうつぶやくと、魔法がとけたかのように、自分の今の状況がどういうものなかに気づいた。
知らないところまできてしまったこと、周りには人っ子1人おらず、助けを求めることすらできないこと。
生まれてはじめて、親が恋しくなったのはこの時だったっけ。
気づいたら、また海に向かって駆け出していた。
ベタベタの潮風を顔中にあびながら、大きな声をあげて泣きながら走った。
ここはどこ、お父さんお母さん、助けて。誰にも聞こえない俺の声はまるで、海に吸い込まれていくようだった。
もしかしたら、家の誰かが助けにきてくれるかもしれない、なんて願いが叶うはずはなくて。
力尽きて海のすぐそばで1人泣いていると、だれかが砂を歩く音が聞こえた。ふとその方向を見ると、そこには真っ白で大きな鳥がいた。その鳥の後ろから
「ねぇ、大丈夫?」
と、声が聞こえた。一体誰なのか、顔を確認しようとするけれど、オレンジ色に光る太陽に照らされてよく見えない。
あなたはだれーーーーーー