「は???ミウ????」
「なんで???」
母さん達の声もする。
「帰ってくんの明日じゃねぇの???」
「わっかんねぇよ、ふっふふ服!とにかく服着ろ!ほら」
そうしている間にも、階段を上ってくる音がトントンと近づいてくる。
「おにいちゃーん、コウちゃーん?」
やばいやばいやばいやばいやばい
「ただいまー……って、なにしてるの?汗びっしょり。」
「き、筋トレ?」
ドアが開く寸前に、なんとか衣服を身につけることはできた。さっきまで俺の着ていたTシャツをイツキが、イツキのを俺が着てしまったが、そんなのは日常茶飯事だったのが不幸中の幸いだ。ミウは気にもとめないだろう。
「ふーん?」
「つーかミウ、帰ってくんの明日っつってなかったか??」
「予定変更になったの。だから電話で言おうと思ったのにさぁー、お兄ちゃんぜんぜん聞いてくれないんだもん。」
「あーー、あれか。ごめんごめん。」
ふと、ベッドの脇にイツキのパンツが落ちていることに気がついて背筋が凍る。
「コウちゃん。」
「ん??」
「コウちゃんにも電話してるのに出てくれないってコウちゃんママも言ってたよ。2人で何してるんだろうって。」
何ってそれは
「げっゲームとか……!?」
「そんなことだろうと思った。ね、お土産あるから降りてきて。お母さんたちも下にいるよ。」
「お、おう!すぐ行くわ。」

ミウが下に降りて行くのを一旦見送って、大急ぎで、かつ静かに速やかにぐっちゃぐちゃのベッドを整え見られてはまずいものを片付ける。
ドラッグストアで購入したモノたちがミウから死角にあったのがせめてもの救いだ。
「コウ、連絡来てた??」
こそこそと話し合う。
「電源切ってたんだよ。」
もう絶対邪魔されたくなかったし。
「イツキこそどうしたんだよ。」
「俺もめっちゃオフってたわ。」
全くお互い様だ。
部屋をあらかた綺麗にし、呼吸を整える。
「よし、行こ。」
「うん。」
「イツキ、ちょっと待って。」
くしゃくしゃになった髪の毛を撫で付ける。根元が湿っている。そうだ。シャワーのあと、ドライヤーをしてやる余裕も無かったんだ。
「ん。おっけ。」
部屋を出る前にふと目が合って、一度だけキスをした。
……一度だけ、のつもりが、火照りの冷めない体にはその一度が甘すぎる毒で、また夢中になってキスをしてしまう。どうしよう、もっと、もっと……

「お兄ちゃーーん!こうちゃーん!はやくー」

下から無邪気な声が聞こえ、我に返り顔を見合わせ苦笑いする。
「行くか。」
「うん。」