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「ただいま〜。」
「んーんんー。」
「わ。なにやってんの??」
今日も今日とて部活を終え帰宅後シャワーを浴びて自室に戻るとイツキが妙な姿でスマホゲームをしていた。 
「んっん。」
「なに?」
もう。という様に眉を顰めると、イツキは口元に貼り付けられていたラップをペリペリと剥がす。
「パックだよ、パック。」
「は?パック?」
「そーだよ。なんか荒れちゃって。紫外線?でも荒れるのな。ネットで調べたらこうやってパックするといいって。どう?ぷるぷるんなってる?」
んー、というように唇を突き出す。ぷるぷるだし、つやつやだし、とかそういう問題じゃ無く、なんていうか、勘弁してくれ。こっちはもうずっとキスするのを我慢してるんだ。
「ふ、ふつう。」
「ふつうて。」
ふつうに、いつも通り魅力的、です。直視できないくらいには。
「つーかこの部屋エアコン効かせ過ぎだろ。寒い。」
「えー?コウが服着てないからだろ。早く着てくださーい。」
「シャワー浴びてきたんだよ。」
「筋肉見せびらかしマン。」
「見せびらかしてないっつーの。」
「触らして。」
「いいけど。」
最近イツキはやたらと俺の腹筋に触りたがる。
イツキの手がペタペタと腹に触れる。
考えない、感じない、何も。無。無。無……。
「イツキも、やる?筋トレ。」
「えー俺筋肉つかないんだよなぁ。」
ほら。と、イツキがペロリとTシャツを捲った。
ムキムキでは無いが僅かにうっすらと筋肉の線の入った腹部がえ、えろ……
「腹……っ、冷えるから、閉まっとけ。」
「はぁい。あっなぁコウ、今日うちで焼き肉するって。あとでちょっと俺らで買い出し行ってきてーって。」
「やば、聞いたらめっちゃ腹減ってきた。」
「あはは、はえーよ。」
「てかイツキそのTシャツまた俺のじゃん。タレこぼすから着替えとけ。」
「こぼさねぇよ。子供じゃあるまいし。」
「こぼすって。」
「えぇーじゃぁ着替えるからなんか黒っぽいやつ貸して。」
「なんで黒。」
「こぼしても黒なら目立たないから。」
「こぼす気じゃねぇか。」

大量の肉と大量の野菜。それに2Lのペットボトルを3本。甘口辛口のタレと、ミウに頼まれた山盛りのお菓子。男子高校生2人がかりでひいひい言いながら持ち帰った。ちょっと買い出しって量じゃ無い。
「イツキ、それまだ生だぞ。」
「こっちは?」
「そっちのは良い。」
「やった。」
「あ、ちげぇよそれは俺が育ててたやつっ。」
「うま。」
「うまじゃねぇよ。ったく、ってかやっぱ垂らしてんじゃん、タレっ。」
「おぉ、黒着といて良かった〜。」
「良くねぇよ。あーぁ。シミんなるかなぁ。」
「遠くから見たら分かんなくね?」
「ギリわかる。」
「まじかー。あ、コウ、こっちのナス焼けてる。ハイ。」
「さんきゅ。」

「大丈夫そうね。」
イツキの母ちゃんが言った。
「なにが?」
「私たちが旅行に行ってる間、大丈夫かなって話。」
「大丈夫だよ。子供じゃあるまいし。」
「そうだけど、さすがに1週間は心配じゃない。」
「は?1週間??聞いてねぇけど。」
「話したわよ。もうイツキはひとの話ぜーんぜん聞いてないんだから。」
「いや、つーか父さん仕事は?」
「お父さんは出張で、方面が一緒だから途中から合流。って、それも話したでしょう。」
「ちょっと待って、コウの父ちゃんて今……」
「単身赴任中。……10月まで。」
「じゃ、1週間誰もいねぇってこと?」
「もう高校生なんだからなんとでもなるでしょう。あ、それでね、イツキの部屋のエアコンもう修理してもダメみたいで、取り替えることになったの。私達が旅行に行ってる間についでに家もあちこち補修しようってことになったから、イツキ、コウちゃんちにいさせてもらってね。」
「「え??」」
「コウちゃんのママがそうしたらいいって言ってくれたの。ありがとうね。」
「どういたしまして。コウ、イッちゃんのこと、よろしくね。」
「よろしく、って……」
イツキと、1週間、2人きり……??

え、ええええ