「だーーっ!もうっわっかんねぇ!」
「まだ始めたばっかりだろ、がんばれよ。」
本人の申告通りというべきか、イツキは再試を受けることになってしまった。
再試で合格点を取らなければ夏休みにみっちり補習があるというのだからさすがのイツキも必死だ。
「永島ほんときらい……てか勉強きらい……」
テーブルに突っ伏してイツキが言う。
「きらいでも5点はねぇよ。」
「えーでもほら50点満点だから、実質10点じゃん。」
「わけわからん理屈こねるな。ほら、こっちの問題やってみな?これ解けたらこっちも分かるから。」
「はぁい。」
隣りで俺も課題を進めていると、ツンツン、と、シャープペンシルのうしろで腕をつつかれた。
「ん?」
「これであってる?」
「うん、できてる、できてる。」
「こっからがわかんねぇんだけど。」
「そしたらこれをこっちへ持ってきて……」
「あー…!なるほど。コウ天才!」
「イツキも基礎はできてんじゃん。これなら再試大丈夫そう。」
「まじ?よっし、じゃぁ問3〜。」
えらいえらい。後でコンビニでアイスでも買ってきてやろう。
俺の方の課題はすぐに終わってしまって、うんうん唸りながら進めるペン先をぼぉっと眺めた。イツキの手って綺麗だよなー……手首、は、細い。けど、前に掴んだ時、結構筋肉付いててビックリしたっけ。
つーかこうやって横から見ると睫毛長いの凄い分かるな。そういやこの前も女子に『睫毛長〜いいなぁ〜』とかって騒がれてた。すげー顔近づけちゃって。だいたいイツキは、
「ねぇコウ、これ……」
ふいに顔を上げたイツキとバッチリ目が合う。
「……っ。」
いけない、と思う隙もなく、赤面してしまった。だってこんな…近い……、と、目を逸らしたのが更に悪手。唇に目が吸い寄せられてしまう。
「コウ?」
俺の名前を呼ぶこの唇の柔らかさを、あたたかさを、俺は知っているんだ。
「顔赤くね?熱ある?」
「あ……暑くて……!イツキの部屋、暑ぃんだよ。」
「あーそれな、エアコン調子悪いんだよ。これから夏だってのにさー困るよなー。」
そう言って、空気を送るようにTシャツの首元を引っ張ってパタパタする。なんか、いろいろ、見え……っ、、
「イツキ……っ、」
「ぅお、びっくりした。なに?」
「コンビニ、行ってくる。」
「え!俺も行きたい。」
「イツキは勉強してなさい。アイス買ってきてやるから。」
「いいじゃん気分転換〜。待って、ちょい着替えるわ。汗かいた。」
目の前でガバリとTシャツを脱ぐことに少しの躊躇いも無いのはイツキにとっては当たり前のこと。なんだけどさ。
クローゼットから替えのTシャツを取り出す背中から目を離せない。
触りたい、とか思ってしまう俺は、きっと変態なんだろう。
「夏休み、親達旅行行くって聞いた?」
「あぁ、なんか言ってたな。」
コンビニの帰り道、アイスを咥えてイツキが言う。まだ夏の始まりだというのに、夜道はじっとりと暑い。
「コウは行く?」
「いや、部活あるし。」
「だよなー。」
「イツキは?」
「んー?俺も。行かない。」
「そっか。イツキ、口んとこ、付いてる。」
「どこ?」
「そっち側じゃない、こっちこっち。」
「とって。」
指の腹で口のハジについたクリームを拭ってやる。されるがままのイツキは小さな子どもみたいだ。思わず抱きしめてしまいたくなる。
「コウー。俺さぁ…」
「ん?」
「俺、ダッツがよかったな。」
「はぁ?あんな高級品ほいほい買えるかよ。」
「でもコウも期間限定のやつ美味そうっていってたじゃん。ココナッツなんとかみたいなやつ。」
「あぁあれは美味そうだった。よし、じゃぁ再試合格したら買ってやろう。」
「ガチ?」
「おう。」
「んじゃ頑張る!帰ったら続き教えて。」
「任せとけ。」
「永島をぎゃふんと言わせよう。」
「ぎゃふんは言わんだろ。」
「永島が言ったら腹筋崩壊する。」
そう言ってイツキは『ぎゃふんだろう、お前達。』と、永島の野太い声をモノマネする。眉を顰めた感じまでそっくりだ。
「あっはは、やばめっちゃ似てる。」
「『な〜ぁに笑ってるんだぁ。』」
「やべ腹痛ぇ。っくく、イツキそれ学校でやるなよ。永島キレるぞ。っぁっははは」
「ははははっっ、やんねーよっ。」
「ほれ帰るぞ。競争!」
「あっ待てっ『そこ廊下走るなぁ〜ぃ。』」
そうやって、2人でゲラゲラ笑って走って帰った。
「まだ始めたばっかりだろ、がんばれよ。」
本人の申告通りというべきか、イツキは再試を受けることになってしまった。
再試で合格点を取らなければ夏休みにみっちり補習があるというのだからさすがのイツキも必死だ。
「永島ほんときらい……てか勉強きらい……」
テーブルに突っ伏してイツキが言う。
「きらいでも5点はねぇよ。」
「えーでもほら50点満点だから、実質10点じゃん。」
「わけわからん理屈こねるな。ほら、こっちの問題やってみな?これ解けたらこっちも分かるから。」
「はぁい。」
隣りで俺も課題を進めていると、ツンツン、と、シャープペンシルのうしろで腕をつつかれた。
「ん?」
「これであってる?」
「うん、できてる、できてる。」
「こっからがわかんねぇんだけど。」
「そしたらこれをこっちへ持ってきて……」
「あー…!なるほど。コウ天才!」
「イツキも基礎はできてんじゃん。これなら再試大丈夫そう。」
「まじ?よっし、じゃぁ問3〜。」
えらいえらい。後でコンビニでアイスでも買ってきてやろう。
俺の方の課題はすぐに終わってしまって、うんうん唸りながら進めるペン先をぼぉっと眺めた。イツキの手って綺麗だよなー……手首、は、細い。けど、前に掴んだ時、結構筋肉付いててビックリしたっけ。
つーかこうやって横から見ると睫毛長いの凄い分かるな。そういやこの前も女子に『睫毛長〜いいなぁ〜』とかって騒がれてた。すげー顔近づけちゃって。だいたいイツキは、
「ねぇコウ、これ……」
ふいに顔を上げたイツキとバッチリ目が合う。
「……っ。」
いけない、と思う隙もなく、赤面してしまった。だってこんな…近い……、と、目を逸らしたのが更に悪手。唇に目が吸い寄せられてしまう。
「コウ?」
俺の名前を呼ぶこの唇の柔らかさを、あたたかさを、俺は知っているんだ。
「顔赤くね?熱ある?」
「あ……暑くて……!イツキの部屋、暑ぃんだよ。」
「あーそれな、エアコン調子悪いんだよ。これから夏だってのにさー困るよなー。」
そう言って、空気を送るようにTシャツの首元を引っ張ってパタパタする。なんか、いろいろ、見え……っ、、
「イツキ……っ、」
「ぅお、びっくりした。なに?」
「コンビニ、行ってくる。」
「え!俺も行きたい。」
「イツキは勉強してなさい。アイス買ってきてやるから。」
「いいじゃん気分転換〜。待って、ちょい着替えるわ。汗かいた。」
目の前でガバリとTシャツを脱ぐことに少しの躊躇いも無いのはイツキにとっては当たり前のこと。なんだけどさ。
クローゼットから替えのTシャツを取り出す背中から目を離せない。
触りたい、とか思ってしまう俺は、きっと変態なんだろう。
「夏休み、親達旅行行くって聞いた?」
「あぁ、なんか言ってたな。」
コンビニの帰り道、アイスを咥えてイツキが言う。まだ夏の始まりだというのに、夜道はじっとりと暑い。
「コウは行く?」
「いや、部活あるし。」
「だよなー。」
「イツキは?」
「んー?俺も。行かない。」
「そっか。イツキ、口んとこ、付いてる。」
「どこ?」
「そっち側じゃない、こっちこっち。」
「とって。」
指の腹で口のハジについたクリームを拭ってやる。されるがままのイツキは小さな子どもみたいだ。思わず抱きしめてしまいたくなる。
「コウー。俺さぁ…」
「ん?」
「俺、ダッツがよかったな。」
「はぁ?あんな高級品ほいほい買えるかよ。」
「でもコウも期間限定のやつ美味そうっていってたじゃん。ココナッツなんとかみたいなやつ。」
「あぁあれは美味そうだった。よし、じゃぁ再試合格したら買ってやろう。」
「ガチ?」
「おう。」
「んじゃ頑張る!帰ったら続き教えて。」
「任せとけ。」
「永島をぎゃふんと言わせよう。」
「ぎゃふんは言わんだろ。」
「永島が言ったら腹筋崩壊する。」
そう言ってイツキは『ぎゃふんだろう、お前達。』と、永島の野太い声をモノマネする。眉を顰めた感じまでそっくりだ。
「あっはは、やばめっちゃ似てる。」
「『な〜ぁに笑ってるんだぁ。』」
「やべ腹痛ぇ。っくく、イツキそれ学校でやるなよ。永島キレるぞ。っぁっははは」
「ははははっっ、やんねーよっ。」
「ほれ帰るぞ。競争!」
「あっ待てっ『そこ廊下走るなぁ〜ぃ。』」
そうやって、2人でゲラゲラ笑って走って帰った。