翌日の昼、ミハイルから電話があった。
 ロシアへは行っていないかもしれないという。
 予想した通り彼女の発言は嘘だったようだ。
「ではまだイスタンブールに」
「いえ」
 最後まで言わないうちに(さえぎ)られた。
「トルコから出た可能性があります」
「えっ、どこへですか?」
「わかりません。今それを調べているところです」
 盗聴アプリによって会話をチェックしているのだという。
「盗聴って、どうやって」
「それはお答えできませんが、あの日電話番号を交換した時に潜ませました」
 ミハイルがスマホをアイラのに重ねるようにしていたことが頭に蘇った。
「あの時ですか?」
「そうです。あの時です」
「へぇ~」
 そうとしか反応できなかった。
「それで私は」
「まだじっとしていてください。一両日中にはなんらかの情報をお渡しできると思いますので」
 そこで通話が切れた。
 倭生那はスマホ画面を見続けるしかなかった。