聞いた瞬間、声を失い、頭の中が真っ白になった。
 事務総長がゼレンスキー大統領と会談した直後に、宿泊しているホテルの近くを攻撃されたのだ。
 明らかに事務総長を狙ったものとしか思えない。
 すぐに安否を確認したが、無事なようで、キーウの大統領府にとどまって安全確認をしたあと移動したとのことだった。
 
 よかった……、
 思わず安堵の息が漏れた。
 それにしてもプーチンの狂気が信じられなかった。
 2日前にモスクワに迎え入れた事務総長がキーウに滞在していることを知りながら打ち込んだのだ。これを狂気と言わずしてなんといえよう。
 それでも事務総長はロシアを非難しなかった。
「私が訪れているキーウに2発のミサイルが着弾したと聞いてショックを受けている。私たちは絶対にこの戦争を終わらせる必要がある」と述べただけなのだ。
 しかも、戦争という言葉を使うという失態を犯した。
 戦争ではなく侵略と言わなければならないのだ。
 不曲は怒りで自らをコントロールできなくなった。
 
「これは国連への侮辱よ。宣戦布告よ」
 悔しくて涙が出てきた。
「男になってよ!」
 声を荒げずにはいられなかった。