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 4月26日、モスクワで事務総長とプーチンとの会談が始まった。
 場所はクレムリンだった。
 そして、あの長机だった。
 その両端に2人が座っていた。
 それは2人の距離が遠いだけでなく、意思疎通が困難であることを暗示しているようでもあった。
 
 事務総長が「特別軍事作戦はウクライナ領土の侵略であり国連憲章に違反している」と批判すると、「今回の特別な作戦はウクライナ東部のロシア系住民を保護するためのものであり、国連憲章に完全にのっとっている」とプーチンは作戦の正当性を強調した。
 その上で、ブチャで多くの市民が殺害されて見つかったことについて、「ロシア軍は関与していない。ウクライナ側による挑発だ」と主張した。
 また、マリウポリの製鉄所で市民が取り残されていることについて、「ウクライナ軍は市民を盾にしたテロリストと同じ行動をとっている。ロシア側が設けた人道回廊は機能している」とウクライナ側を非難した。
 対して事務総長は「ロシアとウクライナが問題解決の為に協力することが必要だ」と訴えたあと、市民を避難させるために双方が協議する場を設けるように提案した。
 
 会談のあと国連は「市民の避難に向けて国連と赤十字国際委員会が関与することで原則的に合意した」と発表し、今後の具体的な協議は国連の人道問題調整事務所とロシア国防省で行われるとした。