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 戦時下であっても宗教儀式が中止されることはなかった。
 まったく同じ日にウクライナとロシアで重要な宗教儀式が執り行われたのだ。
 
 キーウの聖ソフィア大聖堂ではキリスト教東方正教会の復活祭に当たり、ゼレンスキー大統領がビデオ演説を行った。
「今日の祝日は光は闇を、善は悪を、生は死を克服し、ウクライナは必ず勝つと希望を与えてくれる」
 この言葉を聞いた多くの人が胸を打たれて涙を流したという。

 一方、ロシア正教会の復活祭にプーチンがいた。
 キャンドルを手に持ち、神妙な面持ちで「世界の平和、精神の救いのため、祈りましょう」と述べた。
 しかし、それがまったくのでたらめであることをロシア軍が証明した。
 復活祭の日にウクライナ東部で激しい攻撃を行ったのだ。
 それは東部だけではなく南部にも及び、多くの命を奪った。
 建物は破壊され見る影もなくなった。
 プーチンの言う平和が力による支配と服従であることは明白だった。
 思いのままにコントロールできる世界が平和なのだ。
 
 独裁者の言うことを信じてはならない。
 不曲はこの言葉を深く胸に刻んだ。