2

 ウクライナの戦況は緊迫していた。
 ロシア黒海艦隊の司令官が乗船する旗艦『モスクワ』をウクライナが独自開発した高性能地対艦ミサイル『ネプチューン』によって沈没させたという喜ばしいニュースがあった半面、その報復としてキーウへの再攻撃をロシア軍が言明したのだ。
 そして、それが嘘ではないというように再びミサイルが飛んできた。
 そのことによって市民への甚大な被害が明らかになっているという。
 地上軍の侵攻はないにしても、ミサイル攻撃が激化する危険性が増しているのだ。
 それだけでなく、キーウ周辺の防衛に張り付けられてしまうと東部や南部への支援に手が回らなくなってウクライナ軍は孤立してしまうという危惧も浮上している。
 ただでさえ包囲されて厳しい状態に置かれているのに、援軍がないと持ちこたえられないかもしれないのだ。
 
 その背景に5月9日というロシアにとって特別な日がある。
 対ドイツ戦勝記念日だ。
 その日に勝利宣言をするために総攻撃を仕掛けてくるのではないかと(ささや)かれているのだ。
 プーチンも必死だから、総司令官に任命したドゥボルニコフに厳命しているに違いない。
 
 更に、恐ろしい兵器の使用もちらつかせている。
 それはあってはならないことだが、広島と長崎に続く第3の都市が歴史に刻まれる可能性はゼロではない。
 もちろん絶対に阻止しなければならないが、それを止める手段が見つからない。
 プーチンの胸三寸で決まるからだ。
 
 なんとかならないのか、
 呟いてみたものの不曲がどうにかできるものではなく、ただプーチンの取り巻きが彼の異常な行動を止めてくれるのを期待するしかなかった。