限  界

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 それは突然のことだった。
 ロシアが事務総長と会うというニュースが飛び込んできた。
 4月26日に会談することが決まったというのだ。
 場所はモスクワで、会談相手はプーチンとラヴロフ。
 これは、事務総長副報道官が定例の記者会見で正式に発表したものだった。
 前提条件が気になったが、それはないという。
 しかし、だからといって油断はできない。
 あのプーチンなのだ。
 何を考えているのかわからないならず者(・・・・)なのだ。
 事務総長を罠にかけるなど赤子の手を捻るより簡単だろう。
 手玉に取ることなどプーチンにとっては朝飯前に違いない。
 
 対して事務総長は相変わらずのコメントしか発していない。
「ウクライナでの銃声を沈め、安全に人々が避難できるよう今すぐ取れる行動について協議する」という表面的なものだけなのだ。

 停戦と避難は確かに大事なことだが、根本的な解決に繋がるものではない。
 肝心なのは領土の問題なのだ。
 それについては何も触れられていなかった。
 そこまで踏み込む気はないのだろう。
 クリミアやドンバス地方がウクライナ固有の領土であることを国連として公式に伝えなければならないのに、表面を取り繕うだけの会談で終わってしまうのが目に見えるようだった。
 
 それに、ゼレンスキー大統領との会談がロシアの(あと)というのも気になった。
 2日後の28日なのだ。
 会う順番が逆だとしか思えなかった。
 もちろん、もう決まってしまったことなので今更どうこう言っても始まらないが、不曲の脳裏には嫌な予感しか浮かばなかった。