「ロシアに罰を与えてやりたいの」
 大学卒業後も交流を続けているアイラの言葉が決め手だった。
 その言葉がなかったらトルコには来ていなかったかもしれなかった。
 
 彼女はこうも言った。
「ウクライナ侵攻は絶対に許せないし民間人の虐殺は言語道断だ」と。
 そして、「プーチンを許さない。ロシア軍も許さない。なんとしてでも懲らしめてやる」と息巻いた。
 
 その懲らしめる手段が有能な科学技術者の引き抜きだった。
 技術者が減れば技術力が低下し、それが国力の低下につながり、ひいては、ロシア自体の地盤沈下に繋がるというのが彼女の考えだった。
「ロシア人のあなたには悪いけど、ロシアは解体しないとダメだと思うの。今のままこの世に存在させてはいけないと思うの」
 それは、ナターシャも同感だった。
 プーチンが失脚したとしても、ロシアという国が存在している限り独裁者は現れるだろう。
 過去を見ても、レーニンやスターリン、ブレジネフがいた。
 粛清や虐殺や弾圧を行ってきた極悪非道な面々だ。
 特に、スターリンの下では2,000万人の命が失われたという推定情報もあるくらいだ。
 つまり、ソ連邦時代を含めてロシアという国には恐怖を武器にした独裁者が生まれる土壌があるのだ。