駅に着くまではなんともなかったが。満員電車に揺られていると気持ちが悪くなった。
 生唾が出てきてえずき(・・・)そうになった。
 しかし吐くわけにもいかずなんとか堪えて会社に駆け込んだ。
 
 トイレに飛び込むと、何度もえずいて胃の中が空っぽになった。
 液体しか出なかったが、しんどくて震えが来た。
 それでもなんとか朝一番の会議に出たが、プレゼンを聞いているうちに目の前が真っ白になった。
 その後のことは覚えていない。
 気づいた時には病院のベッドに横になっていて、腕には点滴のチューブが繋がれていた。
 
 様子を見るために一晩入院ということになった。
 生まれて初めての入院だった。
 しかし、不謹慎なようだが天国のように思えた。
 妻の匂いがする自宅は地獄でしかなかったからだ。
 当分ここに居てもいいと思った。