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「12万人……」
 呻くような不曲の呟きが机に置かれたメモの上に落ちた。
 それは、ロシアが侵攻して以来強制的に連行されたと言われている子供の数だった。
 大人を入れれば65万人に上るという。
 大変な数だ。
 ロシア側は連行ではなく避難だと主張しているが、そんな戯言を信じるわけにはいかない。
 実態は間違いなく連行なのだ。
『封印列車』と呼ばれる途中下車できない列車に乗せられてシベリアや極東に連れて行かれた可能性が高いのだ。

 パスポートも携帯電話も取り上げられて可哀そうに……、
 どんな扱いを受けているのか考えるだけで背筋が凍る思いがしたが、ユニセフの報告にも驚愕(きょうがく)した。
 ウクライナで自宅を追われた子供の数が500万人に上るというのだ。
 これは全体の三分の二に相当するらしい。
 
 この子たちはどうしているのだろう……、
 国外に逃れられた人たちは安全で支援も手厚いだろうが、問題は国内にとどまっている人たちだ。
 ライフラインが破壊され尽くされている中でどういう生活をしているのか気になって仕方がなかった。
 飢えていないだろうか、病気になっていないだろうか、精神的に参っていないだろうか、と考えると気が滅入るばかりだった。