しかし、怒りの矛先はロシアだけにとどまらなかった。
「この原因を作ったのはドイツとフランスだ」と両国を非難した。
　ロシアに宥和的(ゆうわてき)な対応を取り続けた両国によってNATO加盟を阻止されたことが今日の悲劇に繋がったと強調したのだ。
　
　それは、2008年に開催されたブカレストでのNATO首脳会議にまで遡(さかのぼ)る。
　その時の共同声明に『ウクライナとジョージアが将来NATOに加盟するということについて合意した』とあるのだが、それは口約束に過ぎなかったとゼレンスキーは悔しがる。
　表向きの声明と違って実際は加盟見送りだったというのだ。
　それはロシアを刺激したくない両国の思惑からきたものだという。
「二枚舌外交がこの悲劇を生んだ。私はアンゲラ・メルケル元首相とニコラ・サルコジ元大統領をブチャに招く。両氏には拷問を受けたウクライナの男女に会って欲しい」
　悔しさをにじませたゼレンスキーだったが、しかし、取り返しのつかない現状を嘆くだけで終わるわけにはいかなかった。
　武器の必要性を説いたのだ。
　これ以上の惨事を引き起こさせないためには武器の供与が急務だと訴えたのだ。
　それは今まで以上に強力な武器についてだった。
　ロシア軍を撃退する威力のある武器を提供して欲しいと迫ったのだ。