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「残念ながら与党が勝利しました」

 芯賀が報告すると、総理は眉間に皺を寄せた。

「圧勝だったようです」

「そうか、負けたか……」

「はい、完敗だったようです。野党の指導者さえ自らの地盤で勝てなかったようです」

 プーチンとの親しい関係に厳しい目が向けられているという情報を聞いていたので少なからず野党の勝利に期待をかけていたが、接戦どころか大差がついたという結果に総理もがっかりしているようだった。

「ハンガリーの国民は現在の状況をわかっているのでしょうか?」

 総理の心境を察した芯賀がそれを代弁したが、総理は「う~ん」と唸ったきり何も言わなくなった。
 一枚岩になれないEUの現状を憂いているようだった。
 しかし、それが長く続くことはなかった。

「早速祝電の用意をしてくれ」

「えっ? 祝電ですか?」

 想像もしなかった発言に芯賀は大きく口を開けて目を見開いた。

「そうだ。すぐに打たなければならない」

 間を置かず口頭でその内容を告げられたので、芯賀は慌ててそれをメモに取った。
 それは、一気に身が引き締まるような内容だった。

「承知いたしました。直ちにハンガリー語に訳してまいります」

 芯賀は一礼をして、急ぎ足で部屋を出た。