侵攻が始まると、ラヴロフの態度が一変した。
 プーチンの犬になったのだ。
 プーチンの正当性を外に向かって知らしめる役割に徹するようになったのだ。
 しかしそれは無理からぬことかもしれなかった。
 プーチンに逆らえばどうなるかわからないからだ。
 保身に走るしかなかったのかもしれない。
 それとも、所詮(しょせん)はその程度の人間だったのか。
 どちらにしても彼の発言をまともに聞く西側諸国の人間は誰もいなくなった。
 中国をはじめとした少数の利害関係者しか相手をしなくなったのだ。
 
 その中国の動向が気になっていた。
 ロシアを全面的に支援するのか、それとも静観するのか、中国の出方によって情勢が大きく変化するからだ。
 
 習近平は何を考えているのだろう?
 また独り言ちた不曲はロシアと中国の関係をまとめた資料を棚から取り出した。
 そして椅子に座って目を落とした。