実  夢

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 不曲は夢を見ていた。
 国連大使となって安全保障理事会の会議に臨んでいる夢だ。
 しかも、常任理事国の一員として会議に参加していた。
 その左隣にはドイツの大使が、右隣にはインドの大使が座っていた。
 アメリカ、イギリス、フランス、中国の大使も着席していた。
 しかし、そこにロシアの大使はいなかった。
 何故ならロシアという国そのものが消滅したからだ。
 
 それは、世界の構図が大きく変わったことを意味していた。
 超大国が影響力を行使する古いシステムから多様な価値観が織り成す新しいシステムに移行したのだ。
 強か弱かではなく、大か小かではなく、右か左かではなく、それぞれを認め合い相互に影響を与え合う網目状の構図になったのだ。
 
 安保理事会が新な体制へ移行するに当たって2つの案件が上程された。
 一つは常任理事国の変更。
 もう一つは多数決の導入だった。