それだけではなかった。
 中東からも追い風が吹いた。
 ハマスがイスラエルに激しい攻撃を行っただけでなく、戦闘員を侵入させて多数のイスラエル人や外国人を人質として連行したのだ。
 対してイスラエルは直ちに空爆による反撃を行い、大規模な反撃へと移行した。
 それは中東戦争にも発展しかねない危ういものであったが、欧米各国は直ちにイスラエル支援を表明した。
 自衛権を完全に支持すると。
 しかし、そのことによってイスラエルの攻撃は更に激しくなり、人道被害が急速に拡大し、終わりの見えない泥沼状態に陥った。

 この突発的な紛争はウクライナに致命的ともいえる影響を及ぼした。
 国際世論の関心が完全にイスラエルに移行してしまったからだ。
 ウクライナ支援は目に見えて先細りし、迎撃ミサイルや砲弾が枯渇した前線の部隊は退却を余儀なくされた。

 そんな中、国内から強い追い風が吹いた。
 狙い通りとはいえ、大統領選挙で90パーセント近い得票率を獲得したのだ。
 その結果、お前は5期目どころか『永遠の大統領』を手中に収めることになった。
 もうお前を止めるものは何もなくなり、独裁体制が完全に確立した。
 信じるままに突き進めばいいのだ。
 必ずやウクライナを我が物にし、ベラルーシも併合し、更にモルドバとジョージアを掌中に収めて、ソ連邦、いや、大ロシア帝国を復活させるのだ。
 それがピョートル大帝の生まれ変わりと自任するお前に下された天命であり、その達成は目前にまで来ていると思われた。だが、」