余りにも理不尽すぎる……、
 芯賀は読んでいた資料を机に置いて目頭を押さえ、鼻から息を吐いた。
 今の時代にこんなことが許されるはずはないのに……、
 どう考えてもプーチンの思考回路を理解することができなかった。
 正常な精神を失ってしまったのだろうか……、
 暗澹(あんたん)たる気持ちになると、深いため息が出た。
 それは解決策が見えない失望からも来ていた。
 プーチンを止める特効薬をまだ見つけ出せていないのだ。
 その間にもウクライナの人々が次々に殺されており、その数は信じられないレベルに達しようとしている。
 それだけでなく、数千人規模の女性や子供たちが捕えられてロシア国内に強制連行されたという。
 どんな酷い目に合うことか……、
 頭の中にレイプ、虐待、拷問という言葉が次々に浮かんできて、それが形を成していくとたまらなくなった。
「やめてくれ!」と思わず声が出て両手で顔を覆ったが、終わりのない地獄図を瞼の裏から消すことはできなかった。