しかし、思わぬ敵が予想外のところから襲ってきた。
 新型コロナウイルスだ。
 中国の武漢で発生したこのウイルスは瞬く間に世界に広がり、2020年3月にWHOがパンデミック宣言を出すまでになった。
 このことによって世界の人流が止まった。
 各国が壁を作り始めたのだ。
 飛沫感染による拡大を防ぐためには感染国からの人の流入を抑えることが一番であり、次々に国境封鎖が行われた。
 
 それはロシアでも例外でなく、早々に中国との国境を封鎖し、罹患者をシベリアに隔離した。
 更に、感染者がモスクワで拡大すると、都市封鎖に踏み切った。
 それは経済活動に大きな影響を与えることになったが、問題はそれにとどまらなかった。
 国内問題以上に大変な状況が待ち受けていた。
 原油価格の急落だ。
 新型コロナウイルスの影響によって世界経済全体が急ブレーキをかけたような状態になり、連動して世界各地で工場の稼働が落ち、それによってエネルギー価格が一気に下がった。
 1バレルが20ドル台まで落ち込んだのだ。
 これは1バレル40ドルが最低ラインと考えていたロシアにとって看過できない問題となった。
 外貨収入が一気に落ち込むことになるからだ。
 しかも、先が見通せないという悲観的な状況が問題の根を深くしていた。
 ワクチンも治療薬も無いというお手上げ状態だったのだ。
 そのため世界の感染者数は急増し、死亡者数も一気に増えていった。
 
 流石のお前も頭を抱えた。
 リーマンショック時以上に低迷する世界経済に対して打つ手は何もなかった。
 ただこの感染症が収束するのを待つしかなかった。