一方、国内でも足を引っ張られる問題に悩まされた。
 年金問題だ。
 年金支給開始年齢の引き上げに対する国民の不満が高まったのだ。
 女性が55歳で男性が60歳とした年金支給開始年齢を今後10年間かけて60歳と65歳に引き上げると言明すると、強い不満が寄せられた。
 その結果、クリミア併合で90パーセント近くまで高まった支持率は一気に60パーセント台に落ち込んだ。
 それはお前だけでなく、首相のメドベージェフを直撃した。
 年金問題を直接担当していたことが響いたのだが、付加価値税を18パーセントから20パーセントに引き上げたのも影響した。
 このことを受け、お前は体制の刷新を考え始めた。
 そして2020年1月、遂にメドベージェフを解任した。
 これによって長く続いた双頭政治は終焉(しゅうえん)を迎えた。
 つまり、お前による権力独占体制が整ったのだ。
 それは、お前に意見する者は誰もいなくなったことを意味していた。
 
 そんな中、元宇宙飛行士だった女性議員の提案が議会を通過した。
『現行大統領はその任期をカウントしない』という修正案だった。
 これによってお前は更に2期12年大統領を続けることが可能になった。
 2036年まで権力の座を保持できることになるのだ。
 それだけでなく、望めばその先まで続けることができるようにもなる。
 つまり、『永遠の大統領』が保証されたのも同然になったのだ。