次にやったのがオリガルヒとの戦いだった。
 トップに押し上げてくれた功労者とはいえ、経済の実権を握る金融寡頭(かとう)集団を野放しにしておくことはできなかった。
 当時はロシアの富の4割を4オリガルヒが握るという異常な状態になっており、放置しておけるレベルにはなかった。
 特に、石油資本を牛耳るオリガルフが政治改革を実現して次期首相を目指すというリポートを発表するに至ると、黙っているわけにはいかなくなった。
 間髪容れず首謀者を逮捕し、シベリア送りにした上で、事実上の国有化に踏み切り、資源から生まれる富を国のものとした。

 それに相前後して石油価格が高騰した。
 図らずもお前に追い風が吹いたのだ。
 それは2001年の同時多発テロを契機としたアメリカの対テロ作戦が切っ掛けだった。
 中東の不安定化が進むことによってロシアを石油輸出大国に押し上げたのだ。
 その結果、8パーセントを超える高度成長が始まり、財政基盤も強固となった。
 すると当然のように国民からの信認度も上昇し、2004年の大統領選挙で圧勝した。
 70パーセントを超える得票を得たのだ」

 そこまで話した老人は腕の重みを感じて赤ん坊を見つめた。
 熟睡している顔はとても愛らしかったが、これ以上このままの姿勢で抱き続けるのは難しかった。
 近くの切株に腰を下ろしてその子を抱き直し、大統領2期目のことを話し始めた。