「大統領の任期を半年残したエリツィンが辞任を表明すると、憲法に従って首相のお前が大統領の権限を引き継いだ。
 大統領代行となったのだ。
 その影には政商的性格を持つ集団であるオリガルヒという新興財閥がいた。
 彼らがお前を実質的な権力トップに押し上げたのだ。
 それは利益共同体を築き上げるための戦略だったが、お前は敢えてそれに乗ることにした。
 流れに(さお)さしたのだ。
 その後、選挙を経て2000年5月7日に大統領に就任したお前は名実ともに最高権力者としての地位についた。

 しかし、その時のロシアは目も当てられない状態になっていた。
 社会は分裂し、経済は破壊されていた上に、軍隊は腐敗し装備も劣悪だった。
 かつての大ロシア帝国は二流国家に成り下がっていたのだ。
 これは大国主義者であるお前にとって許すことのできないものだった。
 ロシアは強大な力を持つ帝国でなければならないからだ。
 世界における主要プレイヤーでなければならないのだ。

 それでも、一気にそれを実現することは不可能だった。
 確固たる戦略と力を蓄えるための長い期間が必要だった。
 世界に打って出るためには足腰を鍛えるしか道がなかったのだ。
 そこでお前は国内の問題に的を絞ることにした。
 就任直後に中央と地方の関係の見直しに手を付けたのだ。
 それは改革といってもよいものだった。
 分散的国家状態にあるロシアに危機感を抱いていたお前は完全な連邦国家を目指して垂直的権限の拡大を図った。
 今まで選挙で選ばれていた知事を実質的な任命制度に変えてしまったのだ。