覚 悟
1
「一旦モルドバへ引き上げよう」
オデーサでボランティアを率いるリーダーは、移動する準備を始めるように指示を出した。
連日のようにミサイルとドローンが飛んできてインフラや集合住宅が攻撃されているので、待ったなしの状態になっているのだ。
「ここにいたらいつミサイルが飛んでくるかわからない。ぐずぐずしている場合ではないんだ」
強く促されたが、オデーサを離れるつもりはなかった。
「死ぬかもしれないんだぞ。そんなことになったらどうするんだ」
身の安全を確保するのが最優先だと説得されたが、それでもナターシャの気持ちが変わることはなかった。
オデーサの人たちと共に戦う覚悟ができていたのだ。
それは骨を埋める覚悟と言い換えることができるものだったが、簡単に死ぬつもりはなかった。
大義も正義もないロシア軍のへなちょこミサイルやドローンが自分を殺せるわけはないと固く信じていたからだ。
「最後は正しいものが勝つの」
頻繁に連絡を取り合っているマルーシャが毎日のように発する言葉が心の支えになっていた。
それに、反転攻勢を続けるウクライナ軍の勇敢な姿に力を貰っていた。
オデーサ市民の士気の高さにも鼓舞されていた。
だからここを離れるという選択肢はあり得なかった。
「大丈夫です。皆さんが戻ってくる日までここを守っています」
笑みを浮かべてリーダーに告げると、倉庫の中に入っていつものように支援品の整理に取り掛かった。
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「一旦モルドバへ引き上げよう」
オデーサでボランティアを率いるリーダーは、移動する準備を始めるように指示を出した。
連日のようにミサイルとドローンが飛んできてインフラや集合住宅が攻撃されているので、待ったなしの状態になっているのだ。
「ここにいたらいつミサイルが飛んでくるかわからない。ぐずぐずしている場合ではないんだ」
強く促されたが、オデーサを離れるつもりはなかった。
「死ぬかもしれないんだぞ。そんなことになったらどうするんだ」
身の安全を確保するのが最優先だと説得されたが、それでもナターシャの気持ちが変わることはなかった。
オデーサの人たちと共に戦う覚悟ができていたのだ。
それは骨を埋める覚悟と言い換えることができるものだったが、簡単に死ぬつもりはなかった。
大義も正義もないロシア軍のへなちょこミサイルやドローンが自分を殺せるわけはないと固く信じていたからだ。
「最後は正しいものが勝つの」
頻繁に連絡を取り合っているマルーシャが毎日のように発する言葉が心の支えになっていた。
それに、反転攻勢を続けるウクライナ軍の勇敢な姿に力を貰っていた。
オデーサ市民の士気の高さにも鼓舞されていた。
だからここを離れるという選択肢はあり得なかった。
「大丈夫です。皆さんが戻ってくる日までここを守っています」
笑みを浮かべてリーダーに告げると、倉庫の中に入っていつものように支援品の整理に取り掛かった。