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「2,400機ですって?」
 思わず甲高い声を出してしまった不曲は、スマホを見つめたまま動けなくなった。
 それは、ウクライナの大統領府顧問がSNSで発信したもので、イランから桁違いの数のドローンが送り込まれているのだという。
 更に、使い方を指導する者まで送り込んでいるというのだ。
 しかし、イラン外務省は認めていない。
 イラン製のドローンがウクライナで撃ち落とされている映像があるにもかかわらず、「ロシアにはドローンを提供していない」と否定を続けているのだ。
 しかしそれを真に受ける者は誰もいない。
 そんなことよりも、もし2,400機が正確な数だとすると戦況に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
 更に、ミサイルも提供しているという情報もあるので、もしそれが本当なら電力インフラへの攻撃はますます酷くなるだろう。
 そうなると厳しい冬を迎えるウクライナにとってかなりきつくなる。
 なにせ、1月から2月にかけては最高気温でさえ氷点下になることが多いのだ。
 その中で暖房が制限されるとなると健康面の心配がかなり増すことになる。
 特に持病を持っている人や高齢者はきつい。
 春まで持ちこたえられない人が続出する可能性が高いのだ。
 既に発電所の3割が破壊されたという情報もあるので予断を許さない。
 ウクライナ国民が抱える恐怖はいかばかりかと思うと耐えられなくなる。
『シャヘド136』が滑空している写真を見つめた不曲は、反米同盟ともいえるロシアとイランの結びつきが更に強固になることを案じて、背筋が凍るような思いになった。