酷い……、
 不曲は言葉を失った。
 テレビにはウクライナ各地に撃ち込まれたミサイルによる破壊と火災の映像が映されていた。
 これはロシアによる集合住宅やインフラ施設への大規模な攻撃だった。
 その回数は80回を超え、ミサイルやドローンがキーウやリビウなど各地を襲ったという。
 特に被害が大きかったのが変電所で、ウクライナ各州で電力供給が止まっているという。
 ウクライナ側も必死になって迎撃しているが、そのすべてを撃ち落とすのは不可能のようで、これが続けば被害は甚大になるとキャスターが伝えていた。
 
 持ちこたえられるのかしら?
 思わず呟いたが、それを肯定することはできなかった。
 ドイツ政府が最新鋭の防空システムを輸送するとSNSに投稿していたが、それでどれだけ防げるのかは不明だった。
 それに、最新鋭で高度2万メートルまでを飛行するミサイルや航空機を破壊できる優れものといっても射程距離は40キロしかなく、それも1基だけなのだ。
 全部で4基提供することを表明しているが、順次ということなので、2基目以降は来年になると報じられていた。
 これでは大規模なミサイル攻撃は防げない。
 それに、ベラルーシの動きも不穏だった。
 10月10日にルカシェンコ大統領がロシアと合同部隊を配備することで合意したと発表しており、これはウクライナがベラルーシの領土を攻撃することを念頭に置いているものだというが、ロシアと一体になって攻めていく可能性は否定できない。
 現時点では防衛という観点が強いようだが、それがいつ牙をむくかは誰にもわからない。
 追い詰められたプーチンが盟友ルカシェンコを巻き込む可能性を否定することなんてできるはずはなかった。
 
 お願い……、
 ただ祈ることしかできない不曲は、両手を組んで目を瞑った。