10月4日、4州併合を一方的に定めた文書にプーチンが署名した。
 それは4州がロシアの領土になるということであり、領土防衛を名目にした戦いに移行するということだった。
 
「領土が攻撃された場合は核攻撃も辞さないと明言していますから4州に対するウクライナの反撃が鈍るかもしれませんね」
 芯賀が心配すると、「いや、そんなことはないだろう。4州はあくまでもウクライナの領土であり、それを奪還するだけだから躊躇はしないはずだ」と総理は即座に否定した。
 それでも、「ただ、通貨や社会制度をロシアと一体化すると言っているから住民への影響はかなり大きいと思わなければならない」と今後を案じた。
「そうですね。ロシア国籍の取得を強制されるようですし、パスポートもロシアになり、学校での教育もロシア語になるようですから、かなり混乱するでしょうね」
「それに徴兵のこともある」
 ロシア国籍になったウクライナ人をロシア軍に配属してウクライナ軍と戦わされるのではないかという危惧だった。
「そんなことになったら地獄ですね」
 自国民同士の殺し合いほど惨いことはないのだ。
「そんなことにさせないためにも国連の非難決議が重要だ。今すぐ大使に電話をつないでくれ」
「承知いたしました」