「お前のネットワークは半端ないな」
 会合が終了して会社に戻った時、倭生那は同期の肩を揉んだ。
「まあ、結構種を蒔いてきたからな」
 満更でもないというふうに笑みを浮かべたが、すぐに引き締まって、「これから細部を詰めていって年内を目標に計画の基本骨格をまとめようと思う。それができたら社内への根回しを始める。そうなったら忙しくなるぞ」と目を細めた。
 頷きを返すと、不意にナターシャの顔が浮かんできた。
 あの時一方的に話を終わらせた彼女だったが、心底ではなんとかしてもらいたいと期待しているに違いない。
 朗報を待っているに違いないのだ。
 
 必ずなんとかするから。
 己の覚悟を呟きに込めてオデーサの方角に目を向けた。