バックミラーには手を振る姿が映っていた。
 それは病院の敷地を出るまで続いた。
 それを見ていると何度も熱いものが体の奥から込み上げてきたが、必死になって堪えて車を前に進めた。
 
 門を出てその姿が見えなくなると、強い気持ちが沸き起こってきた。
 それは、今度は自分がパンと水と医薬品を持って助けに来なければならないというものだった。
 絶対に実行すると誓ってモルドバへ向かった。
 
 危険な昼間の運転にもかかわらず、爆撃も火砲も受けなかった。
 戦車や装甲車に出会うことも無かった。
 白衣の天使が守ってくれたのは間違いないように思えた。
 それに、ナビがほぼ正確に進路を導いてくれたので迷うことも無かった。
 日付が変わる頃にモルドバに到着した。