どのくらい経っただろうか、ドアが開き、ストレッチャーに乗せられたミハイルが手術室から運び出された。
 彼は目を瞑っていた。
 全身麻酔ではないので意識はあるはずだが、出血と疲れで目を開けていられないのではないかと思った。
 
 付き添っていた医師から手術の状況を説明されたあと、抗生物質を渡された。
 しかし2日分しかなかった。
 医薬品が底を突きかけているのでこれで精一杯なのだという。
 傷口が化膿するのではないかと心配になったが、どうしようもなかった。
 
 ミハイルにあてがわれたベッドは手術室に近い廊下だった。
 ベッドといってもマットレスを床に直置(じかお)きしたもので、シーツもなく薄い毛布がかけられているだけだった。
 それに、次々に緊急手術が行われているので騒然としていた。
 術後の休息には不適だと思われたが、病室はすべて埋まっているので我慢するしかなかった。