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「私が運転していきます」
 ミハイルだった。
 既に車を手配しているという。
「でも、」
 その提案に乗りたいのはやまやまだったが、彼を巻き添えにするわけにはいかなかった。
 一時は仲間が増えることに心強さを感じたが、よくよく考えてみればミハイルが言っていることがどうにも()に落ちなかった。
 妻を探しに行くという明確な目的がある自分と違って彼にはそれがないのだ。
 祖先の恨みを果たすためにウクライナ人を助けるとは言っているが、それが本音だとはどうしても思えなかった。
 憐憫(れんびん)の情という気がして仕方がなかった。
 それに、オデーサへ向かう道にはどんな危険が待ち構えているかわからない。
 空爆が最も怖かったが、戦車が待ち伏せしているかもしれないし、地雷が埋められているかもしれない。
 何があるかわからないのだ。
 しかし、何度断っても彼は強固に出発すると言い張った。