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 ナターシャはウクライナに接するモルドバ国境の町バランカにいた。
 ここにはオデーサなどウクライナ南部の街から避難民が押し寄せている。
 女性と子供が圧倒的に多いが、健康な人だけではないので、国境に近い検問所の診療施設には毎日何十人もの患者が訪れる。
 薬が切れて体調が悪化した人も多いし、精神的なダメージを受けている人も少なくない。
 しかし、それに対応する人も金も薬も足りていない。
 何もかもが不足しているのだ。
 
 そんな中、今日はイスタンブールから多くの支援物資が届いた。
 生理用品と赤ちゃん用のおむつだ。
 命からがら逃げてきた人が多いからこれらの製品を数多く持参している人は少ない。
 手持ちの量は限られているのだ。
 しかし必需品なのでないと困る。
 でも男の人にはわからない。
 女の人が気を配ってあげなければならないのだ。