対  峙   

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「他国に侵攻した国家を常任理事国にしておくのはおかしいと思います」
 国連の会合から帰ってきた大使に不曲(ふまがり)強子(きょうこ)が不満をぶつけた。
 不曲は次席補佐官であり、潔癖と正義感の塊が服を着ている人間だと自認していた。
「大罪を犯した国家は罪を(つぐな)わなければならないのではないでしょうか」
 しかし、大使は首を振るだけで何も言わなかった。
 無力感に(さいな)まれているのは間違いないようだった。
 それはわかっていたが、自制することはできなかった。
 だから続けて発言しようとしたが、「次の予定は?」と(さえぎ)られた。
 大使の声は首席補佐官に向けられていた。
 煙たがられたのを肌で感じた不曲は、「失礼いたします」と頭を下げてその場を辞した。
 
 席に戻ると、昨日の夢が蘇ってきた。
 自分が大使になって安全保障理事会でロシア大使と対峙している夢だった。