「俺たちに相応しいかどうかなんて周りが決めることじゃない。お前自身が俺たちを望んでくれることが一番大切だ」
「俺たち自身が?」
「そうだよ。周りがどうかなんて関係ない! れーちゃんが俺たちを望んでくれるなら一生傍でれーちゃんを護らせて」

 二人はそう言ってそれぞれ布団を掴んでいた麗紋の手を握りしめてきた。
 麗紋は大きな手に包まれた温みにはにかんで、二人を潤んだ眼差しでそっと見上げた。

「そっか。誰かに認められる必要なんてなくて、俺の気持ちで良かったんだ」
「麗紋」
「俺、二人と違ってああいうこと、免疫ないから。女の子とも、その。エッチしたことないから。……心の準備がいる。だからその、続きは成人してからにしてね」
「麗紋を怖がらせたくは無い。だが触れたい。キスはいいか?」

(うぐ、無口な碧兄がいつになく積極的に攻めてくる)

 こくっと頷いたらまたいきなり碧が顔を近づけてきた。頷いた手前避けられず、むぐむぐした唇に触れるだけのキスをされる。しかしすぐに綺麗な眉を釣りあげた翠に肩をつかれて引き剥がされる。

「碧! 油断も隙もない」
「ねえ。それにやっぱり、どっちかなんて急に言われても選べないよ。二人とも大好きなんだから。だからさ、今まで通り……」
「「ちょっとまて」」

 今まで通りでいようと言いかけたのを察して、双子がその先を封じ込めにきた。また腰が引けたが手をがっちり握られて逃げられない雰囲気だ。こういう時の息のピッタリ感は本当にすごいと感心してしまう。
 その後、二人はまたも顔を見合せて目配せしている。

「じゃあとりあえず、当分は麗紋は俺たち二人の恋人ってことでいいな?」
「え? 恋人? 二人の?」

 流石に無理でしょ、と口を開きかけたらまた畳み掛けるように翠が綺麗な顔をさりげなく寄せてきたから、手を握られて避けようがない。
 顔を真っ赤にしてギュッと目をつぶったら、クスッと笑われて頬に甘いキスを落とされた。
 からかわれたと思い小憎らしい翠を睨みつけると、今まで以上に甘いとろんとした顔つきで微笑まれるから拍子抜けしてしまう。

「分かったよ。ああいうエッチなことは成人してからね。当分ウブウブのれーちゃんを堪能できて俺は嬉しいよ」
「からかうの禁止!」
「本気ならいいのか?」

 魅惑的な低音ボイスで真面目に碧が囁いてきたから、ぞくぞくっと貞操の危機を感じて麗紋はブンブン首を振る。

「俺まだ十六です」
「でも、あー良かった。れーちゃん四月四日生まれだもんね。再来年、年が明けたらもうすぐ成人。十八になるの楽しみ。俺たちのどっちか選べるように全力でアピールするからね。沢山デートしようね」

(俺、あと一年数ヶ月で成人……)

 先延ばしにしたつもりが成人が思いのほか近くて、麗紋は顔をひきつらせた。

(俺の初めてが、桜と一緒に散る…….)

「生涯添い遂げるつもりだ。麗紋、同じ墓に入ろう」
「いきなり重たい!」
「俺たちから学校離れたくらいで逃げられると思ってた? 学校以外は朝晩一緒に居ようね。高校卒業したら俺と一緒に住もう? それまでに俺たち、どちらから選んでね?」
「こわっ! どっちも重たい!」

 ただ二人と並び立つ男として認められたかっただけなのに、自分で仕掛けた勝負の行方がこんなことになってしまうとは。

「観念しろ、麗紋」
「観念しよーね。れーちゃん」

 2人同時に抱きしめられて胸の間でギューギュー潰されながら、麗紋は熱が上がった幼子のように顔を真っ赤にして卒倒したのだった。


                     終