「湯冷めするから、ちゃんと着ろ」
「ええ、暑いよ」
「ほら、これでも飲め」
「ん、あんがと」
いつ見てもそれが寝起きですらいきなり男前な翠は綺麗な笑顔で差し出されるそれを受け取ると、その場で一気にごきゅ、ごきゅっと喉を鳴らして飲み干した。
そのまま今度は翠に手を取られ、麗紋が泊まる時にいつも使っている客間兼三人のたまり場に連れていかれた。
机の上には麗紋の機嫌を取るための好物のショートケーキと炭酸飲料が置かれ、アイシング用の氷嚢と救急箱、それからピアッサーを碧が職人のような手つきで二つ並べて満足げに頷いた。
「さて、準備万端だな」
「いただきます~」
あえてピアッサーの方を見ないで、ささっと麗紋は麗紋は伯母が買ってきたケーキに向かって早速手を伸ばすが、すっと横から翠の手が伸びてきて皿ごと奪われてしまった。
「だーめ。ご褒美はあとでな?」
「はーっ。もう分かったよ。でもさ、なんでそんなに俺にピアス開けたいの? しかもなんで両側?」
「うーん。それ今聞いちゃう? 開けたら教えてやるよ」
「え……。俺は訳も知らされずに身体に穴開けられるのか」
2人は意味深な微笑みを浮かべたまま質問には答えない。
「じゃ、俺から先行くね」
麗紋の耳たぶに翠の指先がふれ、白玉のように柔らかなその感触を確かめるように触る。
「あーあ。この柔いもちもち触感も触りおさめかあ」
「うわ、くすぐったい! そんな残念そうなら止めればいいだろ」
「だーめ。止めないよ」
麗紋は耳元で囁かれると弱いのだ。それを知っていてイタズラ好きの翠はわざと熱い吐息を吹きかけてくる。
「こしょいんだよ」
麗紋は膝に握りしめた拳を置き涙目で嫌がった。そんな様子は余計に嗜虐心をそそられるのか、翠はにやあっと人の悪い笑みを浮かべる。小さい頃から翠の方がより麗紋にちょっかいをかけ、それを碧に窘められて兄弟喧嘩になることもしょっちゅうだったのだ。
麗紋がぎゅっと目を瞑ると翠の甘くも低い声がぞくぞくっとうなじをくすぐり、産毛がぞわりと立った。
「怖いなら、目を瞑ってて。すぐに終わるよ?」
「その方が余計怖いから」
「じゃあ、こっちにこい」
三つ並べたふっかふかの布団の縁に胡坐をかいた碧がひょいっと麗紋の腰を抱き寄せ、自分の胸に凭れかからせた。碧も翠もまた麗紋よりさらにがっしり男性らしい身体つきなってきて羨ましいばかりだ。膝の上にカチコチに緊張して乗せていた麗紋の拳を開きながら、一回りも二回りも大きな手がぎゅっと握る。
「手を握っててやるから、我慢しろ」
「碧兄」
「ええ、暑いよ」
「ほら、これでも飲め」
「ん、あんがと」
いつ見てもそれが寝起きですらいきなり男前な翠は綺麗な笑顔で差し出されるそれを受け取ると、その場で一気にごきゅ、ごきゅっと喉を鳴らして飲み干した。
そのまま今度は翠に手を取られ、麗紋が泊まる時にいつも使っている客間兼三人のたまり場に連れていかれた。
机の上には麗紋の機嫌を取るための好物のショートケーキと炭酸飲料が置かれ、アイシング用の氷嚢と救急箱、それからピアッサーを碧が職人のような手つきで二つ並べて満足げに頷いた。
「さて、準備万端だな」
「いただきます~」
あえてピアッサーの方を見ないで、ささっと麗紋は麗紋は伯母が買ってきたケーキに向かって早速手を伸ばすが、すっと横から翠の手が伸びてきて皿ごと奪われてしまった。
「だーめ。ご褒美はあとでな?」
「はーっ。もう分かったよ。でもさ、なんでそんなに俺にピアス開けたいの? しかもなんで両側?」
「うーん。それ今聞いちゃう? 開けたら教えてやるよ」
「え……。俺は訳も知らされずに身体に穴開けられるのか」
2人は意味深な微笑みを浮かべたまま質問には答えない。
「じゃ、俺から先行くね」
麗紋の耳たぶに翠の指先がふれ、白玉のように柔らかなその感触を確かめるように触る。
「あーあ。この柔いもちもち触感も触りおさめかあ」
「うわ、くすぐったい! そんな残念そうなら止めればいいだろ」
「だーめ。止めないよ」
麗紋は耳元で囁かれると弱いのだ。それを知っていてイタズラ好きの翠はわざと熱い吐息を吹きかけてくる。
「こしょいんだよ」
麗紋は膝に握りしめた拳を置き涙目で嫌がった。そんな様子は余計に嗜虐心をそそられるのか、翠はにやあっと人の悪い笑みを浮かべる。小さい頃から翠の方がより麗紋にちょっかいをかけ、それを碧に窘められて兄弟喧嘩になることもしょっちゅうだったのだ。
麗紋がぎゅっと目を瞑ると翠の甘くも低い声がぞくぞくっとうなじをくすぐり、産毛がぞわりと立った。
「怖いなら、目を瞑ってて。すぐに終わるよ?」
「その方が余計怖いから」
「じゃあ、こっちにこい」
三つ並べたふっかふかの布団の縁に胡坐をかいた碧がひょいっと麗紋の腰を抱き寄せ、自分の胸に凭れかからせた。碧も翠もまた麗紋よりさらにがっしり男性らしい身体つきなってきて羨ましいばかりだ。膝の上にカチコチに緊張して乗せていた麗紋の拳を開きながら、一回りも二回りも大きな手がぎゅっと握る。
「手を握っててやるから、我慢しろ」
「碧兄」