童顔美人の母親に似た顔立ちは、幼い頃ならば少女と見まごう可愛らしさと言われ続けてきたし、今でもしっかり女顔だ。二人と並び立つ男子として、今日の試合に勝つ! などとチームメイトの前で宣言した手前、この手は使いたくなかったが、翠と碧が自分にとことん甘いと踏んで大きな瞳をうるる、とさせながらあざとい感じでお願いをしてみる。

「「だめ(だ)」」
「なんでだよ」
「だってきっと、何だかんだ理由つけて逃げようとするでしょ? れーちゃん」
「俺たちが勝ったからにはちゃんと言うこと聞いてもらうからな」
「楽しみだなあ。今晩やろうね」
「い、嫌だよ。ねえ、碧兄?」
「往生際が悪いぞ。麗紋。負けたらどうなるか分かっていたんだろ。それで勝負を受けたんだから」

 普段はより麗紋に甘い碧に助けを求めたが聞いてくれない。
 耳を塞いだままふるふると首を振って涙目で見上げる麗紋に、双子は口をそろえて「「可愛い顔したって、許さない(よ)?」」などとうそぶいた。

「でも、でも、俺、初めてだし。絶対痛いから、心の準備が!」

 じたばたと腕の中で暴れる麗紋を、碧がクラスメイトの前でも臆面もなく後ろからがしっと羽交い絞めに抱き締める。

「しっかり準備してから挑む。きっと大丈夫だ」

 正面に回った翠はするりと麗紋の頬と耳たぶを弄びながら、周りがうっとりするようなイケボで囁いた。

「ねえ? 俺たちにれーちゃんの初めて貰わせて」
「へ、変な言い方するなよ」

 恥ずかしさで涙目になり顔を真っ赤にした麗紋を弄り回すような会話に、またも女子生徒からうっとりとため息交じりの声がするし、男子生徒も何やらただならぬ雰囲気にごくりと息をのむ。

「じゃ、れーちゃんは連れて帰るね?」

 すると居ても立っても居られない様子で頼れるチームメイト、加賀谷が二人の前に立ちふさがった。

「待ってください、先輩」
「加賀谷ああああ、助けて」

 救いの神の登場に麗紋が嬉しそうなのが気に喰わないとばかり、双子は剣呑な輝きを双眸に宿らせて加賀谷を威嚇する。
 加賀谷とて一年生の中では一番の長身だが、精悍な顔立ちと逞しい体躯を誇る双子の前に立ったら、やはり一回り年少にみえる。なにより見下ろしてくる二人の威圧感がすごい。加賀谷はごくりと喉を鳴らした。僅かに顔を引きつらせながらも二人に言い募った。

「幾ら勝負の結果、麗紋が負けたと言っても、本人の合意が得られないまま無理やりするのはどうかと思います」
「だよな。この二人強引なんだよ。加賀谷からも言ってやって」

 クラスメイトに向かって助けてくれと手を伸ばすが、逃がさんとばかりに二人はじたばたとする麗紋を再び囲い込んだ。

「加賀谷? いつも麗紋の味方ばかりするね? 前から思ってたんだ。お前麗紋のこと、どう思ってるの?」