前髪から覗く瞳に吸い込まれた。
「ねー、お姉さん、どしたん?」
行きつけのカフェに入ると、遅い時間なのに珍しく自分以外の客がいた。ソファーに沈み、目元を覆うその人に声をかける。
「え…」
キョロ、と周りを見てから自分のことだと気づいた女の人は、一瞬オレを見て、顔を少し伏せた。
「そうそう、おねーさんのこと。」
もう一度言うと、顔を伏せたまま返事が返ってくる。
「や、普通に…」
「だって結構遅いよ?泣いてんの?」
テーブルを挟んだ目の前のソファーにどかっと座ると、気まずそうに体を少し斜めに逸らされた。拒否するような仕草に、なぜか少し意地悪な気持ちが芽生える。
「…。」
目を逸らし、固まったように動かないおねーさん。オレはソファーから立ち上がり、顔を背けている方から声をかけた。
「ねぇ、こっち見てよ。」
顔を覗き込んだときに、おねーさんもぎこちなく、少し上を向く。目があった。怯えたように、ふるりと睫毛が震える。その瞳は色んな色が混ざったような黒で。
「…あ、」
吸い込まれるように…顔を寄せた。なんとなく。なんとなく、そのまま唇をあわせようとした。寸前に、はらりと俺の髪が、かけていた耳から落ちる。すると、おねーさんは金縛りが解けたかのように、ビクリと後ずさった。
「あの、私…帰るので…っ。」
震えた小さい声で言う。カタッとキッチンから音がした瞬間に、おねーさんはパタパタと机を整えて、席を立った。
「お会計お願いします。」
「はい。ありがとうございます。」
「あの…ご馳走様でした。ココアもケーキも、美味しかったです。」
「ありがとうございます。ぜひまた来てください。」
店員の笑顔を見て、ホッとした顔をした後、まるでオレはいないかのように会計を済ませて出ていった。
「ん〜〜〜…」
ソファーに沈み込んで、目を閉じ、少し呻く。
「涼、僕の店でナンパ?いい度胸だね。」
店員、というか、店主である琢磨が話しかけてくる。片目だけ開けるとふわりとしたココア色の髪が俺を覗き込んでいた。
「え…あれ、ナンパ?」
「話しかけてたんじゃないの?」
「そうだけどさ…」
思い出すのは、色んな色が混ざったようなあの黒い瞳。見ていたら吸い込まれる感覚がした。
「んあ〜〜〜…」
手で顔を覆い、もう一度、ソファーに沈むように姿勢を崩す。ここで寝ないでよ、琢磨はその一言だけ残して、キッチンに戻っていった。
「ねー、お姉さん、どしたん?」
行きつけのカフェに入ると、遅い時間なのに珍しく自分以外の客がいた。ソファーに沈み、目元を覆うその人に声をかける。
「え…」
キョロ、と周りを見てから自分のことだと気づいた女の人は、一瞬オレを見て、顔を少し伏せた。
「そうそう、おねーさんのこと。」
もう一度言うと、顔を伏せたまま返事が返ってくる。
「や、普通に…」
「だって結構遅いよ?泣いてんの?」
テーブルを挟んだ目の前のソファーにどかっと座ると、気まずそうに体を少し斜めに逸らされた。拒否するような仕草に、なぜか少し意地悪な気持ちが芽生える。
「…。」
目を逸らし、固まったように動かないおねーさん。オレはソファーから立ち上がり、顔を背けている方から声をかけた。
「ねぇ、こっち見てよ。」
顔を覗き込んだときに、おねーさんもぎこちなく、少し上を向く。目があった。怯えたように、ふるりと睫毛が震える。その瞳は色んな色が混ざったような黒で。
「…あ、」
吸い込まれるように…顔を寄せた。なんとなく。なんとなく、そのまま唇をあわせようとした。寸前に、はらりと俺の髪が、かけていた耳から落ちる。すると、おねーさんは金縛りが解けたかのように、ビクリと後ずさった。
「あの、私…帰るので…っ。」
震えた小さい声で言う。カタッとキッチンから音がした瞬間に、おねーさんはパタパタと机を整えて、席を立った。
「お会計お願いします。」
「はい。ありがとうございます。」
「あの…ご馳走様でした。ココアもケーキも、美味しかったです。」
「ありがとうございます。ぜひまた来てください。」
店員の笑顔を見て、ホッとした顔をした後、まるでオレはいないかのように会計を済ませて出ていった。
「ん〜〜〜…」
ソファーに沈み込んで、目を閉じ、少し呻く。
「涼、僕の店でナンパ?いい度胸だね。」
店員、というか、店主である琢磨が話しかけてくる。片目だけ開けるとふわりとしたココア色の髪が俺を覗き込んでいた。
「え…あれ、ナンパ?」
「話しかけてたんじゃないの?」
「そうだけどさ…」
思い出すのは、色んな色が混ざったようなあの黒い瞳。見ていたら吸い込まれる感覚がした。
「んあ〜〜〜…」
手で顔を覆い、もう一度、ソファーに沈むように姿勢を崩す。ここで寝ないでよ、琢磨はその一言だけ残して、キッチンに戻っていった。



