数時間後の『charmée』。
「うぅ〜ん……。」
愛はソファーでくったりとしていた。
「愛さん、これ、酔ってね?」
「多分……。」
涼と琢磨がソファーに沈む愛を覗き込む。
「そんなに飲んでたっけ?」
「カクテル、度数強いやつを何杯か飲んでたし……あとケーキにも洋酒入ってる。涼の20歳記念用に、いつもより多めにしちゃったんだよね。」
琢磨の言っていた特別なチョコケーキは、洋酒が効いていて大人の味のケーキだった。愛はカクテルとケーキで予想以上にアルコールを摂取してしまったようで、完璧に酔っていた。
「酒飲んで、酒の入ったケーキ食べたからかぁ。ぱくぱく食べてたもんなぁ……。愛さん。」
「普段もお酒入ったケーキとか好きだから、てっきり強いのかと……。」
二人が話しているうちに、愛の視界が回り始める。
「愛さん、気分悪くない?」
琢磨が愛に水を差し出す。愛は、水を一口飲んだ。
「んぐ……。だいじょうぶれす……。むしろ気分は良いというか……。」
「それはそれで心配だよ。」
琢磨が冷静に突っ込んだ。
「気分悪くないなら、そろそろ帰る?オレ、送るよ。」
涼が愛の鞄を持ち、立ち上がる。
「ほら、愛さん。オレにつかまって。」
「ん〜。」
「ここ。ちゃんと掴んでて。」
涼が愛の手を取り、自分の腕を持たせた。愛がウトウトと意識を飛ばしかける。涼が琢磨に話しかけた。
「琢磨、片付け任せてもいい?」
「もちろん。元から僕がするつもりだったし。涼こそ大丈夫?」
「オレ?酔ってないよ。」
「いや、変身しちゃわない?」
「は?オレが?何に?」
「送り狼。」
琢磨が涼の耳元で小さく言った。その一言に真っ赤になる涼。
「は⁉︎はぁ⁉︎なんねーよ!ばーか!ばーか!」
「声大きいな。冗談じゃん。気をつけてね。」
「うっせ!」
逃げるように涼が『charmée』から愛を連れて出ていく。
「まだまだガキだなぁ。」
琢磨の笑いを含んだ声が『charmée』にゆっくり溶けた。
ふわふわ、ウトウト、私は涼くんに引っ張られて歩いていた。
「なぁんで、涼くんは、酔ってないのぉ?」
「オレ、一杯しか飲んでないし。」
「なんで、一杯しか飲んでないのぉ〜?」
「愛さんを帰りに送るつもりだったから、酔うわけにいかないじゃん。……オレ、ほんと酒弱くなくて良かった。こんな愛さん、琢磨にも任せられないよ。」
私は、うだうだと涼くんに話しかける。涼くんは少しあきれたような、それでもなんだかやっぱり私のことを好きなような、そんな顔をして私を家まで送ってくれた。
「ほら、着いたよ。今日はありがとう。すげぇ、楽しかった。」
涼くんが私の家の扉を指さす。私は、なんだか寂しくなって、扉を見た後に涼くんを振り返った。
「ん?どうしたの?」
そう言った涼くんの声も、瞳も優しくて。年下の男の子なのに不思議な色気みたいなのもあって。つい、見惚れてしまった。ぼーっとする私を見て、涼くんが目を細めて笑った。
「……なぁに、その目?愛さん、オレのこと好きになっちゃったの?」
小さい子に言うみたいな、ちょっとふざけたからかうような言い方。仲直り以来、言わなかった言葉。その言葉を私はゆっくり飲み込んだ。好きなっちゃった?うん、大好き。頭の中は、ぽやんとしていて、いつもみたいに色々考えることが出来なかった。
「……ん。」
こくん、とうなずく。涼くんが目を見開いた。その表情が珍しくて、私は首を傾げて、涼くんを見つめた。
「……だめ。その目、ほんとやばい。その言葉、酒を飲んでない時にちゃんと聞きたい。」
涼くんが手で私の目を覆い隠した。
「……んぅ。」
涼くんの手は大きくて、私の顔のほとんどを覆っていた。私は、なんだか、いたずらしたい気分になって、私の顔を覆っていた手のひらに唇を当てた。
「……ちゅ。」
「なぁ、あ⁉︎」
涼くんが、バッと両手を上げた。触ってません!とでも言うときのようだ。
「何すんの⁉︎愛さん!」
「なんとなく。」
「ほんと、勘弁して⁉︎酔っ払うとこうなるなんて聞いてない……‼︎」
「涼くんも私にちゅーする?」
「は⁉︎」
慌てる涼くんをもっと見たくて、そう言った。涼くんは、私の言葉に、ごくりと喉を鳴らす。
「うわぁ……ここまで言われて、断るの無理だろ……。ぜってぇ、送り狼とかなりたくねぇ。でも……。せめて、ほっぺ……?」
涼くんが小さくぶつぶつと何か言っている。最後だけ少し聞こえた私は、首を傾げた。
「ほっぺにちゅーするの?いいよ?」
片頬をぷくりと膨らませて、指差す。涼くんは、そんな私を見て、はぁ〜とため息をついた。
「これは、家送ったお礼としてもらうだけだから……。ほっぺならセーフだよな……?」
涼くんが、ぶつぶつと自己暗示のように言った。キョロキョロと周りを見てから、意を決したように私のほっぺにキスをした。ちゅ、という音が可愛くて、笑ってしまう。
「んふふ。ちゅーされちゃったぁ。」
とても良い気分だ。ふわふわして、夢のよう。
「……!もう、オレが我慢できてるうちに早く家入って……‼︎」
「ん……ばいばい。おやすみ。」
「うぁぁ……愛さん、まじで覚えてろよ…!くっそ、琢磨も変なこと言いやがって……!おおかみぃ……!」
頭を抱えて、よく分からないことをうめきながら、涼くんは私が家に入るまで家の前で待っててくれた。
翌日の朝、酔っても記憶は飛ばさない私は頭を抱えていた。
「やってしまった……。死のう……。」
この日ほど、全てを忘れてしまいたくなったのは初めてだった。
「うぅ〜ん……。」
愛はソファーでくったりとしていた。
「愛さん、これ、酔ってね?」
「多分……。」
涼と琢磨がソファーに沈む愛を覗き込む。
「そんなに飲んでたっけ?」
「カクテル、度数強いやつを何杯か飲んでたし……あとケーキにも洋酒入ってる。涼の20歳記念用に、いつもより多めにしちゃったんだよね。」
琢磨の言っていた特別なチョコケーキは、洋酒が効いていて大人の味のケーキだった。愛はカクテルとケーキで予想以上にアルコールを摂取してしまったようで、完璧に酔っていた。
「酒飲んで、酒の入ったケーキ食べたからかぁ。ぱくぱく食べてたもんなぁ……。愛さん。」
「普段もお酒入ったケーキとか好きだから、てっきり強いのかと……。」
二人が話しているうちに、愛の視界が回り始める。
「愛さん、気分悪くない?」
琢磨が愛に水を差し出す。愛は、水を一口飲んだ。
「んぐ……。だいじょうぶれす……。むしろ気分は良いというか……。」
「それはそれで心配だよ。」
琢磨が冷静に突っ込んだ。
「気分悪くないなら、そろそろ帰る?オレ、送るよ。」
涼が愛の鞄を持ち、立ち上がる。
「ほら、愛さん。オレにつかまって。」
「ん〜。」
「ここ。ちゃんと掴んでて。」
涼が愛の手を取り、自分の腕を持たせた。愛がウトウトと意識を飛ばしかける。涼が琢磨に話しかけた。
「琢磨、片付け任せてもいい?」
「もちろん。元から僕がするつもりだったし。涼こそ大丈夫?」
「オレ?酔ってないよ。」
「いや、変身しちゃわない?」
「は?オレが?何に?」
「送り狼。」
琢磨が涼の耳元で小さく言った。その一言に真っ赤になる涼。
「は⁉︎はぁ⁉︎なんねーよ!ばーか!ばーか!」
「声大きいな。冗談じゃん。気をつけてね。」
「うっせ!」
逃げるように涼が『charmée』から愛を連れて出ていく。
「まだまだガキだなぁ。」
琢磨の笑いを含んだ声が『charmée』にゆっくり溶けた。
ふわふわ、ウトウト、私は涼くんに引っ張られて歩いていた。
「なぁんで、涼くんは、酔ってないのぉ?」
「オレ、一杯しか飲んでないし。」
「なんで、一杯しか飲んでないのぉ〜?」
「愛さんを帰りに送るつもりだったから、酔うわけにいかないじゃん。……オレ、ほんと酒弱くなくて良かった。こんな愛さん、琢磨にも任せられないよ。」
私は、うだうだと涼くんに話しかける。涼くんは少しあきれたような、それでもなんだかやっぱり私のことを好きなような、そんな顔をして私を家まで送ってくれた。
「ほら、着いたよ。今日はありがとう。すげぇ、楽しかった。」
涼くんが私の家の扉を指さす。私は、なんだか寂しくなって、扉を見た後に涼くんを振り返った。
「ん?どうしたの?」
そう言った涼くんの声も、瞳も優しくて。年下の男の子なのに不思議な色気みたいなのもあって。つい、見惚れてしまった。ぼーっとする私を見て、涼くんが目を細めて笑った。
「……なぁに、その目?愛さん、オレのこと好きになっちゃったの?」
小さい子に言うみたいな、ちょっとふざけたからかうような言い方。仲直り以来、言わなかった言葉。その言葉を私はゆっくり飲み込んだ。好きなっちゃった?うん、大好き。頭の中は、ぽやんとしていて、いつもみたいに色々考えることが出来なかった。
「……ん。」
こくん、とうなずく。涼くんが目を見開いた。その表情が珍しくて、私は首を傾げて、涼くんを見つめた。
「……だめ。その目、ほんとやばい。その言葉、酒を飲んでない時にちゃんと聞きたい。」
涼くんが手で私の目を覆い隠した。
「……んぅ。」
涼くんの手は大きくて、私の顔のほとんどを覆っていた。私は、なんだか、いたずらしたい気分になって、私の顔を覆っていた手のひらに唇を当てた。
「……ちゅ。」
「なぁ、あ⁉︎」
涼くんが、バッと両手を上げた。触ってません!とでも言うときのようだ。
「何すんの⁉︎愛さん!」
「なんとなく。」
「ほんと、勘弁して⁉︎酔っ払うとこうなるなんて聞いてない……‼︎」
「涼くんも私にちゅーする?」
「は⁉︎」
慌てる涼くんをもっと見たくて、そう言った。涼くんは、私の言葉に、ごくりと喉を鳴らす。
「うわぁ……ここまで言われて、断るの無理だろ……。ぜってぇ、送り狼とかなりたくねぇ。でも……。せめて、ほっぺ……?」
涼くんが小さくぶつぶつと何か言っている。最後だけ少し聞こえた私は、首を傾げた。
「ほっぺにちゅーするの?いいよ?」
片頬をぷくりと膨らませて、指差す。涼くんは、そんな私を見て、はぁ〜とため息をついた。
「これは、家送ったお礼としてもらうだけだから……。ほっぺならセーフだよな……?」
涼くんが、ぶつぶつと自己暗示のように言った。キョロキョロと周りを見てから、意を決したように私のほっぺにキスをした。ちゅ、という音が可愛くて、笑ってしまう。
「んふふ。ちゅーされちゃったぁ。」
とても良い気分だ。ふわふわして、夢のよう。
「……!もう、オレが我慢できてるうちに早く家入って……‼︎」
「ん……ばいばい。おやすみ。」
「うぁぁ……愛さん、まじで覚えてろよ…!くっそ、琢磨も変なこと言いやがって……!おおかみぃ……!」
頭を抱えて、よく分からないことをうめきながら、涼くんは私が家に入るまで家の前で待っててくれた。
翌日の朝、酔っても記憶は飛ばさない私は頭を抱えていた。
「やってしまった……。死のう……。」
この日ほど、全てを忘れてしまいたくなったのは初めてだった。



