クリスマス当日。
オレは、たった5分のあの時間、ありえないくらい浮かれてたんだ。
「…うわぁ〜次でラスト…。」
愛さんを誘ったクリスマスライブ。「最後の曲だけでもいいから。」なんて言ったけど、本当は全部見て欲しかった。そんなライブももう最後の曲。でも、愛さんは現れない。
「かっこいいとこ、見せたかったなぁ…。」
愛さんが、今日のためにここ最近残業して時間を作ろうとしてくれていたことは、琢磨から聞いて知っていた。愛さんは、仕事の波があって、年末時期は特に激務らしい。頑張ってくれていたらしいけど、来れそうにないのか。ガキっぽいわがままで、無理を言ってしまった。
「はぁ…。」
「涼?どうした?」
同じようにライブに出演してる仲間が、オレに声をかける。
「いや、まぁ…。」
「ほら、準備。クリスマスなんだから最高に盛り上がってこいよ!」
出番が近づいてくる。舞台上に立つ。目を閉じていると、スポットライトがオレを照らした。薄く目を開く。愛さんが座るはずだった席の方を見た。
(……!)
吸い寄せられるように見た席には、勇気を出して呼んだ彼女。まるで引き寄せられたかのように目があった。全身に電気が走り、熱を帯びる。キラキラする照明とうれしさにクラクラと目眩がした。手に持ったギターの重さだけがこれが現実だと教えてくれた。
「〜〜〜♪」
全身で歌う。それはずっと前に作った夢を追う歌。でも、今はその夢には愛さんと一緒にいることも含まれていて、これまで歌ったときよりも、重く深く歌う。愛さんが好きだ。瞳を見て、運命だと思った。オレに怯える姿はちょっと可愛いと思ってたし、笑った顔はもっと見たいと思った。クリスマスにおしゃれした姿、俺より小さい手、ライブに誘った時の少し赤い顔。死ぬほど愛おしくなって、守りてぇ〜!って思った。ガキっぽい感情だと思うけど、これが今のオレの最大の恋だ。
オレが歌い終わり、愛さんをもう一度見た。愛さんは、こっちを見て、にこりと笑う。その笑顔に少し胸がざらりとした。笑っているのに、なんだか愛さんが遠くなった気がした。オレは袖に帰る。暗くなる舞台。
「お疲れ様!打ち上げ来るだろ?」
ライブが終わり、仲間たちから話しかけられる。会場から出ていく客の中から愛さんを見つけることが出来なかった。知り合いのスタッフがいたから、声をかける。
「なぁ…オレのさぁ…」
「ん?あ、涼の呼んでた人なら帰ったよ。涼の曲が終わってすぐかな?会っていかなくていいんですか〜?って聞いたんだけど。」
「…そっか。あ、わり。今日は打ち上げパスで。」
肩を組んでついてきていた仲間に謝り、帰り支度をする。愛さん、無理してきてたもんな。もしかすると、もう一度会社に戻るのかもしれない。オレも『charmée』に寄って帰ろう。琢磨に、愛さんが来てくれたこと話したいし。そう思い、ギターを担いだ。会場の熱とは正反対の冷たい外の空気。空にはキラキラと星が輝いていて、クリスマスすぎる夜だ。オレは琢磨になんて言おうと少しわくわくしながら、手袋をして、ギターを持ち直した。
『charmée』の扉を少し開く。聞こえたのは、会いたかった人の声。な〜んだ、ここに来てたんだ。オレはそう思って、中に入る。そこには、愛さんの頬に手を添えた琢磨がいた。は?キスしてんの?ガツンと頭を殴られたかのような衝撃。シャウトが響くようなぐちゃぐちゃの脳内。無音の『charmée』。
「何してんの?」
オレは一瞬でカラッカラになった喉で小さく言った。手を離した扉のベルの音が、カランカランと響く。
「涼くん…?」
愛さんの震えた声。ハッとしてこちらを見る琢磨。
「オレのライブ終わりが待てないくらい…琢磨に会いたかった?」
親密そうな二人の様子に苛立ちを込めた声になる。なんで、オレのところにいてくれないの?
「ちがっ…!」
「違わねーじゃん。ここにいるってそういうことだろ?」
「涼くん!聞い、」
「聞かねえ。はぁ…ライブ来てくれて、すっげぇうれしくって、浮かれて…オレ、バカみてぇじゃん。」
愛さんからの言葉が怖くて、被せるように拒否をした。喉がヒクリとなり、涙で二人が滲む。どうにもならない気持ちに、ぐしゃぐしゃと頭をかいた。それでも、気がおさまらなくて、舌打ちとため息がでる。ぐきゅ、と喉が苦しそうに音を立てて、もうこれ以上は冷静になれなかった。
「もういい。」
それだけ言って、オレは愛さんから顔を背け、店を出た。クリスマスなのに、滲んだ涙は冷えることがなくって。熱く熱くオレの目から溢れていった。
オレは、たった5分のあの時間、ありえないくらい浮かれてたんだ。
「…うわぁ〜次でラスト…。」
愛さんを誘ったクリスマスライブ。「最後の曲だけでもいいから。」なんて言ったけど、本当は全部見て欲しかった。そんなライブももう最後の曲。でも、愛さんは現れない。
「かっこいいとこ、見せたかったなぁ…。」
愛さんが、今日のためにここ最近残業して時間を作ろうとしてくれていたことは、琢磨から聞いて知っていた。愛さんは、仕事の波があって、年末時期は特に激務らしい。頑張ってくれていたらしいけど、来れそうにないのか。ガキっぽいわがままで、無理を言ってしまった。
「はぁ…。」
「涼?どうした?」
同じようにライブに出演してる仲間が、オレに声をかける。
「いや、まぁ…。」
「ほら、準備。クリスマスなんだから最高に盛り上がってこいよ!」
出番が近づいてくる。舞台上に立つ。目を閉じていると、スポットライトがオレを照らした。薄く目を開く。愛さんが座るはずだった席の方を見た。
(……!)
吸い寄せられるように見た席には、勇気を出して呼んだ彼女。まるで引き寄せられたかのように目があった。全身に電気が走り、熱を帯びる。キラキラする照明とうれしさにクラクラと目眩がした。手に持ったギターの重さだけがこれが現実だと教えてくれた。
「〜〜〜♪」
全身で歌う。それはずっと前に作った夢を追う歌。でも、今はその夢には愛さんと一緒にいることも含まれていて、これまで歌ったときよりも、重く深く歌う。愛さんが好きだ。瞳を見て、運命だと思った。オレに怯える姿はちょっと可愛いと思ってたし、笑った顔はもっと見たいと思った。クリスマスにおしゃれした姿、俺より小さい手、ライブに誘った時の少し赤い顔。死ぬほど愛おしくなって、守りてぇ〜!って思った。ガキっぽい感情だと思うけど、これが今のオレの最大の恋だ。
オレが歌い終わり、愛さんをもう一度見た。愛さんは、こっちを見て、にこりと笑う。その笑顔に少し胸がざらりとした。笑っているのに、なんだか愛さんが遠くなった気がした。オレは袖に帰る。暗くなる舞台。
「お疲れ様!打ち上げ来るだろ?」
ライブが終わり、仲間たちから話しかけられる。会場から出ていく客の中から愛さんを見つけることが出来なかった。知り合いのスタッフがいたから、声をかける。
「なぁ…オレのさぁ…」
「ん?あ、涼の呼んでた人なら帰ったよ。涼の曲が終わってすぐかな?会っていかなくていいんですか〜?って聞いたんだけど。」
「…そっか。あ、わり。今日は打ち上げパスで。」
肩を組んでついてきていた仲間に謝り、帰り支度をする。愛さん、無理してきてたもんな。もしかすると、もう一度会社に戻るのかもしれない。オレも『charmée』に寄って帰ろう。琢磨に、愛さんが来てくれたこと話したいし。そう思い、ギターを担いだ。会場の熱とは正反対の冷たい外の空気。空にはキラキラと星が輝いていて、クリスマスすぎる夜だ。オレは琢磨になんて言おうと少しわくわくしながら、手袋をして、ギターを持ち直した。
『charmée』の扉を少し開く。聞こえたのは、会いたかった人の声。な〜んだ、ここに来てたんだ。オレはそう思って、中に入る。そこには、愛さんの頬に手を添えた琢磨がいた。は?キスしてんの?ガツンと頭を殴られたかのような衝撃。シャウトが響くようなぐちゃぐちゃの脳内。無音の『charmée』。
「何してんの?」
オレは一瞬でカラッカラになった喉で小さく言った。手を離した扉のベルの音が、カランカランと響く。
「涼くん…?」
愛さんの震えた声。ハッとしてこちらを見る琢磨。
「オレのライブ終わりが待てないくらい…琢磨に会いたかった?」
親密そうな二人の様子に苛立ちを込めた声になる。なんで、オレのところにいてくれないの?
「ちがっ…!」
「違わねーじゃん。ここにいるってそういうことだろ?」
「涼くん!聞い、」
「聞かねえ。はぁ…ライブ来てくれて、すっげぇうれしくって、浮かれて…オレ、バカみてぇじゃん。」
愛さんからの言葉が怖くて、被せるように拒否をした。喉がヒクリとなり、涙で二人が滲む。どうにもならない気持ちに、ぐしゃぐしゃと頭をかいた。それでも、気がおさまらなくて、舌打ちとため息がでる。ぐきゅ、と喉が苦しそうに音を立てて、もうこれ以上は冷静になれなかった。
「もういい。」
それだけ言って、オレは愛さんから顔を背け、店を出た。クリスマスなのに、滲んだ涙は冷えることがなくって。熱く熱くオレの目から溢れていった。



