きらきらした瞳が私を映した。
その日はなんとなく甘くて温かい飲み物が飲みたくて。そういや、家からも会社からも近いけどココは入ってことなかったな、なんて思いながら狭い路地に入る。『charmée』と書かれた看板がかかった少し小さなカフェ。遅くまであいているらしいこのカフェは店員が少ないらしく今は1人しかいない。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
と、こちらを見て、微笑んだ店員は子犬のような人だった。ココアのような色のふわふわした髪。微笑んだ顔は陽だまりのようだ。店内を一度見渡した。どうやら、客も私1人らしい。カウンターから1番近い、テーブルが低めの席に座る。暖色のライトに照らされたソファーにゆっくり沈んだ。机のメニューをチラリと見た。
「すみません。ココアください。ホットで。」
「かしこまりました。」
ふぅ、と一息つく。社会人3年目。今年入ってきた初めての後輩の仕事を見つつ、自分の仕事をするのは、時間配分が難しい。半年経ったが、繁忙期なのもあり、頭をとても使った気がする。ぐっと目を強く閉じるとまだパソコン画面の光がチカチカ見えた。明日終わらせなくてはならない仕事内容が頭をよぎる。
「お待たせいたしました。」
温かいココアが運ばれてくる。ココアの上にのったホイップクリームがぷわぷわと揺れた。隣に小さめの金のスプーンが置かれる。
「少し多めにクリーム盛ったので良かったらどうぞ。」
金のスプーンと同じように、きらきら光る瞳が私を見る。一瞬、目を合わせた自分の視線がぐるぐるとまわる。お礼の言葉がすぐ出なくて…ゆっくりと口を開く。
「…おすすめのケーキありますか?」
店員さんは少しキョトンとしたが、すぐに笑顔に戻った。
「このかぼちゃのプリンケーキ、今日からなんです。」
メニューを裏返して期間限定のページを見せてくれた。『旬のものは身体にいい』と何かの本で読んだ気がする。
「それ、お願いします。」
「ありがとうございます。すぐお持ちしますね。」
店員さんがキッチンへ向かった。ホイップクリームをつつくとココアの温かさでふわふわ溶けていく。少しだけすくって食べてみると頭も体も糖分を求めていたのがはっきりと分かった。
「どうぞ。」
店員さんがかぼちゃのプリンケーキをテーブルに置く。フォークに持ち替えて、ケーキを食べた。かぼちゃの甘みを活かしたケーキでプリンケーキだけど甘すぎない。ココアとケーキなんて甘すぎるかな、と思っていたけど、そんなことはなかった。
「僕、奥にいるので、ごゆっくりどうぞ。何かあったら呼んでくださいね。」
店員さんがキッチンの奥に行った。ココアをもう一度、飲む。甘さにホッとして、グス、と鼻を啜る。別に何が悲しいとかはない。ちょっと疲れていたし、気を張っていたのが、緩んだだけだった。考え込むように手で目元を覆った。
「ねー、お姉さん、どしたん?」
急に人の声と気配。想定外のことに焦って目元を拭い、前を見る。そこには普段の私なら絶対近寄らない雰囲気の男の子が立っていた。チャラさに少しヤンキーが入ったような治安の悪そうな見た目。キラキラした金髪。そういうファッションなのか、伸びただけなのか髪の天辺は茶色い。それはまさに、プリンといわれる………え、プリンの妖精じゃないよね…?
私は突然の出来事に、考えていた明日のスケジュールや、もやもやした気持ちを吹っ飛ばされるのだった。
その日はなんとなく甘くて温かい飲み物が飲みたくて。そういや、家からも会社からも近いけどココは入ってことなかったな、なんて思いながら狭い路地に入る。『charmée』と書かれた看板がかかった少し小さなカフェ。遅くまであいているらしいこのカフェは店員が少ないらしく今は1人しかいない。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
と、こちらを見て、微笑んだ店員は子犬のような人だった。ココアのような色のふわふわした髪。微笑んだ顔は陽だまりのようだ。店内を一度見渡した。どうやら、客も私1人らしい。カウンターから1番近い、テーブルが低めの席に座る。暖色のライトに照らされたソファーにゆっくり沈んだ。机のメニューをチラリと見た。
「すみません。ココアください。ホットで。」
「かしこまりました。」
ふぅ、と一息つく。社会人3年目。今年入ってきた初めての後輩の仕事を見つつ、自分の仕事をするのは、時間配分が難しい。半年経ったが、繁忙期なのもあり、頭をとても使った気がする。ぐっと目を強く閉じるとまだパソコン画面の光がチカチカ見えた。明日終わらせなくてはならない仕事内容が頭をよぎる。
「お待たせいたしました。」
温かいココアが運ばれてくる。ココアの上にのったホイップクリームがぷわぷわと揺れた。隣に小さめの金のスプーンが置かれる。
「少し多めにクリーム盛ったので良かったらどうぞ。」
金のスプーンと同じように、きらきら光る瞳が私を見る。一瞬、目を合わせた自分の視線がぐるぐるとまわる。お礼の言葉がすぐ出なくて…ゆっくりと口を開く。
「…おすすめのケーキありますか?」
店員さんは少しキョトンとしたが、すぐに笑顔に戻った。
「このかぼちゃのプリンケーキ、今日からなんです。」
メニューを裏返して期間限定のページを見せてくれた。『旬のものは身体にいい』と何かの本で読んだ気がする。
「それ、お願いします。」
「ありがとうございます。すぐお持ちしますね。」
店員さんがキッチンへ向かった。ホイップクリームをつつくとココアの温かさでふわふわ溶けていく。少しだけすくって食べてみると頭も体も糖分を求めていたのがはっきりと分かった。
「どうぞ。」
店員さんがかぼちゃのプリンケーキをテーブルに置く。フォークに持ち替えて、ケーキを食べた。かぼちゃの甘みを活かしたケーキでプリンケーキだけど甘すぎない。ココアとケーキなんて甘すぎるかな、と思っていたけど、そんなことはなかった。
「僕、奥にいるので、ごゆっくりどうぞ。何かあったら呼んでくださいね。」
店員さんがキッチンの奥に行った。ココアをもう一度、飲む。甘さにホッとして、グス、と鼻を啜る。別に何が悲しいとかはない。ちょっと疲れていたし、気を張っていたのが、緩んだだけだった。考え込むように手で目元を覆った。
「ねー、お姉さん、どしたん?」
急に人の声と気配。想定外のことに焦って目元を拭い、前を見る。そこには普段の私なら絶対近寄らない雰囲気の男の子が立っていた。チャラさに少しヤンキーが入ったような治安の悪そうな見た目。キラキラした金髪。そういうファッションなのか、伸びただけなのか髪の天辺は茶色い。それはまさに、プリンといわれる………え、プリンの妖精じゃないよね…?
私は突然の出来事に、考えていた明日のスケジュールや、もやもやした気持ちを吹っ飛ばされるのだった。