急に女の子は泣き出し、希望は頭を下げた。

なんだ、やっぱり付き合うのか。

嬉し泣きかな。

俺は、走り出した。

希望たちの目の前を走り抜けて、呼び止められてることなんて気にせずに、家まで走った。

これでもかってぐらい、走った。

止まらずに、走り続けた。

急いで家に帰って、布団に潜り込んだ。

自然と涙が出てきて、弱い自分と、あの女の子に負けた気がして悔しかった。


しばらくすると家のチャイムがなった。

ピンポーン


追いかけてきたんだろうか。

何のために?

家には誰もいない。

俺が出るしかない。

もしかしたら、他の人かもしれないし。

あれ、俺ってこんなマイナス思考だったか?

いつから…。

いいか、とりあえず出よう。

重い体を起こし、玄関へと向かった。

明らかに、希望の声がした。

ドンドンドンドンと玄関のドアを叩く音と、希望が俺を呼ぶ声。

希望は、泣いていた。

俺は、ゆっくりとドアを開ける。

「なんで希望が泣いてんの」

「だって、…だってだって、戻って来いって言ったのたっくんなのに、どっか行っちゃうから、嫌われたかと思った。なんで早く出てきてくれないの!?」

「俺だって…泣…いや、お前が付き合う女の子がいるなら俺なんて必要ないから邪魔者は消えたんだよ」

「何、邪魔者って」

「だって付き合うんだろ?喜んで泣いてたじゃん女の子」

「いや、違うよ。断ったんだ。好きな人がいるからって、そしたら泣かれちゃって、だから頭下げたんだ」

「え?付き合うんじゃ…」

「違うよ、何勘違いしてんの?たっくん、考えすぎだよ。僕はたっくんが好きなのは変わらない」

なんだ、俺が好きなのか。

そっか。


「そう、だよな。そうじゃなくっちゃな。俺の事しか頭にないんだもんな」

「そうだよ、何今更」

「いや、嬉しくて」

そっと胸をなで下ろした。

安心すると、希望が愛おしくてたまらなくて、抱きしめてしまった。

「もう俺から離れんな、そばにいろ」

「たっくん?急にどうしたの」

「俺、気付いたんだよ、希望の仕草とか、甘え方とか、意外と面倒見良くて、真面目で、人懐っこい希望の行動とか、全部好きなんだよ」

「たっくん、やっと気付いたんだ、自分の気持ち」

「やっと…?ずっと俺が好きだったって言いたいのかよ」

「実はね、仕組んでたの。ほんとの話」

「は?なにを…」

抱きしめていた体をそっと離し、希望の話を聞き始めた。

「他校の女の子にナンパされて、その時にもう振ってたんだよね。でも、ちょっと協力して欲しいって伝えたら、喜んでって言うから手伝ってもらったのに、2度目の告白になるけどそれを断ったら、演技なはずだったのに、本気でまた泣かれちゃって」

「は、はぁ…?」

困惑した。

そんな事しなくても、いずれ俺は気付いてたはずなのに。

「ちゃんと謝罪とお礼言ったか」

「言ったよ。ありがとうって、でもやっぱり付き合えない、ごめんって」

「そうか。悪いことしたな」

「そう、かもしれないね。でもこうでもしなきゃ、絶対気付かなかったよ、たっくん」

「そうか?でもよかった。希望が俺のそばにいてくれて。離れないでいてくれて」

俺は、もう一度希望を抱きしめた。

力強く、抱きしめた。

「僕もたっくんが好きだから、嬉しいよ。ずっと一緒にいたい、好き!好き好き!大好き!」

ベタベタくっついてくる犬みたいに、しっぽがあったら思いっきり振ってそうで、ちょっと笑えた。

「お前、可愛いな」

「お前じゃないし、希望だし〜、いいよ?好きにしても」

「そんな付き合い方しねえよ。するなら、こうかな」

俺は希望のおでこにキスをした。

「ふぁっなんでおでこ…」

「わざとだよ」

そう言って、今度は唇にキスをした。

希望は、口をパクパクさせていた。

「も、もう1回…しよ?」

希望は、上目遣いでそう言った。



可愛い俺の恋人は、やっぱり小悪魔だった。

昔から俺の扱い方をよく分かってて、踊らされてるのは俺の方かもな。

それでもやっぱり、希望は可愛いんだよな。


俺は二度目の恋をした、初恋の男の子に。