「俺、そういう趣味ないから。いいから早く帰るぞ、希望」

そう言い放ち、俺は教室を出た。

「んあー、待ってよ!」

仕草とか喋り方は女みたいなままだった。

幼い頃から、人懐っこい希望の甘え方が好きでいたけど、高校生になってもあんまり変わらなくて、話しやすかった。

「そんな女みたいな声出すなよ」

「別にいいじゃん。こんな歳まで成長してここまで来てるんだから、今更直せないよ、好きな気持ちも、忘れられないよ。高校生になってもかっこいいもん、たっくん」

「まあな、俺かっこいいから、モテるから」

自分に自信があるのは、小中で何人にも告白されていたから。

それでも、1人も付き合ったことないのは、希望が忘れられなかったから。

まあ男だったけど。

彼女でも作るかー。男ってわかって長年の初恋も失恋したし。

「その感じだと彼女とか居ないよね。立候補してい?恋人」

「なんで居ないって決め付けるんだよ」

「いるの?」

そう言われると困るんだよな。

「…いないけど」

「ほら、図星じゃん。じゃあ僕が恋人になる」

「んな事勝手に決めんなよ、俺の事惚れさせてからにしろ」

「惚れさせたらいいの?」

グッと近づいて顔を覗き込んできた希望の顔は、美形で、肌も綺麗で、俺よりも10センチくらい低い希望は、上目遣いで俺の事を見てくる。

か、可愛い…。不覚にもそう思ってしまった。

「そ、そういう話じゃない」

「たっくん、顔赤くなってるよ?単純だねやっぱり」

「…は、はぁ…!?わざと上目遣いしたのかよ」

「たっくんの好みなんて丸わかりだよ。まあ、任せてよ。そのうち好きになるのは確信してるから」

希望は、思ってるよりも小悪魔的な行動をするタイプだった。

まあ、嫌いじゃないけど。

「帰るぞ!」

スタスタと歩き始めた俺に小走りで追いかけてくる希望は、やっぱり可愛かった。

か、可愛ければ俺って男でもいいのか。

「んあー、待ってよー!」

追いかけてきた希望は、俺の腕にしがみついて来て、嬉しそうに笑っている。

「まぁいいか、希望が同じ学校の同じクラスでよかったよ。1年間よろしく」

「たっくんの家の近くだから、一緒に通おうね」

「は?彼女じゃないんだしって、何言っても無駄か。家まで来そうだしな」

「なんで分かったの?迎えいくよ」

「はいはい」

掴まれた腕を振り払わずにいるのは、隣にいるのが嫌じゃない証拠なんだろうな。

「あー!まんざらでも無い顔だー!」

「もう何も言うな」