桜がひらひらと舞う季節、高校の入学式を迎えた。
校長先生の長い話を聞き、生徒代表の話を聞き、やっとの思いでクラスに入ると、今度は長い長いクラスメイトの自己紹介の順番待ち。
適当に名前と好きな食べ物でも言っとくか。
何とか自己紹介を終えると、教科書を貰い、帰宅する時間となった。
帰る前にトイレでも行っとくか。
そう思い、席を立とうとするとクラスメイトに声をかけられた。
「覚えてる?」
その相手は全くもって誰かわからず咄嗟に低い声でこう答えた。
「ごめん、誰」
なんの心当たりもない見知らぬやつに声をかけられて不機嫌になった俺は、そのまま話を聞かずにトイレに向かった。
「たっくん、僕だよ!幼稚園の時、仲良くしてたじゃん。のぞみちゃんって呼んでくれてた」
俺の記憶の中にある、のぞみちゃんは、女だった。
だが、俺の通い始めるこの学校は、男子高だった。
「え、のぞみちゃん?え、まって?ここ男子校だけど、しかも遠くに転校したはず」
女だよな?女って言ってくれ…。頼む。
何かの間違いであってくれ。
「そうだよ、だって僕、男だから」
「のぞみって、女の名前じゃ…」
信じられねぇ。
のぞみちゃんが男だったなんて。
「白戸 希望、僕の名前、女みたいかもしれないけど、間違いなく今日から男子校の生徒だしね。分かってくれる?紺野 拓海くん」
「なんで俺のフルネーム知って…」
「知ってるよ、僕の母親がいつも紺野さんちのたくみちゃんがーって言ってたから、それにさっき自己紹介してたし」
俺の親はのぞみちゃんとしか言わなかったから、一切気づかなかったな。
「そ、そうなんだ。俺なんて女だと思ってたぐらいなのに」
「ちゃん付けだったもんね、そう思うのも無理ないよ」
「てか、トイレまでついてくる気?」
「いいじゃん、同じ男なんだし、トイレぐらい」
「なんか気まづいんだけど、女だと思ってたし」
なんか変な気分。
「そっか、じゃあクラスに戻ってたっくんのカバンも取ってくる。一緒に帰ろう」
「ん、わかったよ。よろしく」
そうか。同じクラスなんだっけ。
さっさと俺もクラス戻るかな。
トイレを済まし手を洗い、クラスまで戻ると、何かをじーっと見つめる希望の姿があった。
「希望、何見てんだよ」
「え?あー、たっくんのスマホケース。小さい頃の僕らの写真が裏に挟んであったから、懐かしいなと思って」
「忘れないようにな。随分希望も変わったけどな。肩ぐらいまであった髪が男らしく短髪になって、でも喋り方はあんまり変わってない気がするけど」
「まあ、ね。ねえ、覚えてる?結婚の話。幼い頃、結婚しようねって言い合ってたこと」
「あ、あぁ…、まあでもそれは、女だと思ってたからな」
「なんで?今でも愛し合える関係でしょ?僕たち」
「…っ…は?何言って、男同士だぞ」
「それ、差別だから。性別なんて関係ない!僕はずっと、たっくんのこと好きで、今でもそれが忘れられなくて、今日たっくんを見つけて、心の底から嬉しかったのに」
「今でも好きって、本気なのかよ…」
「そうだよ、本気。たっくんの事が好きだったから、こっちに戻ってきたんだ。忘れられなくて、もしかしたら会えるかもって」
校長先生の長い話を聞き、生徒代表の話を聞き、やっとの思いでクラスに入ると、今度は長い長いクラスメイトの自己紹介の順番待ち。
適当に名前と好きな食べ物でも言っとくか。
何とか自己紹介を終えると、教科書を貰い、帰宅する時間となった。
帰る前にトイレでも行っとくか。
そう思い、席を立とうとするとクラスメイトに声をかけられた。
「覚えてる?」
その相手は全くもって誰かわからず咄嗟に低い声でこう答えた。
「ごめん、誰」
なんの心当たりもない見知らぬやつに声をかけられて不機嫌になった俺は、そのまま話を聞かずにトイレに向かった。
「たっくん、僕だよ!幼稚園の時、仲良くしてたじゃん。のぞみちゃんって呼んでくれてた」
俺の記憶の中にある、のぞみちゃんは、女だった。
だが、俺の通い始めるこの学校は、男子高だった。
「え、のぞみちゃん?え、まって?ここ男子校だけど、しかも遠くに転校したはず」
女だよな?女って言ってくれ…。頼む。
何かの間違いであってくれ。
「そうだよ、だって僕、男だから」
「のぞみって、女の名前じゃ…」
信じられねぇ。
のぞみちゃんが男だったなんて。
「白戸 希望、僕の名前、女みたいかもしれないけど、間違いなく今日から男子校の生徒だしね。分かってくれる?紺野 拓海くん」
「なんで俺のフルネーム知って…」
「知ってるよ、僕の母親がいつも紺野さんちのたくみちゃんがーって言ってたから、それにさっき自己紹介してたし」
俺の親はのぞみちゃんとしか言わなかったから、一切気づかなかったな。
「そ、そうなんだ。俺なんて女だと思ってたぐらいなのに」
「ちゃん付けだったもんね、そう思うのも無理ないよ」
「てか、トイレまでついてくる気?」
「いいじゃん、同じ男なんだし、トイレぐらい」
「なんか気まづいんだけど、女だと思ってたし」
なんか変な気分。
「そっか、じゃあクラスに戻ってたっくんのカバンも取ってくる。一緒に帰ろう」
「ん、わかったよ。よろしく」
そうか。同じクラスなんだっけ。
さっさと俺もクラス戻るかな。
トイレを済まし手を洗い、クラスまで戻ると、何かをじーっと見つめる希望の姿があった。
「希望、何見てんだよ」
「え?あー、たっくんのスマホケース。小さい頃の僕らの写真が裏に挟んであったから、懐かしいなと思って」
「忘れないようにな。随分希望も変わったけどな。肩ぐらいまであった髪が男らしく短髪になって、でも喋り方はあんまり変わってない気がするけど」
「まあ、ね。ねえ、覚えてる?結婚の話。幼い頃、結婚しようねって言い合ってたこと」
「あ、あぁ…、まあでもそれは、女だと思ってたからな」
「なんで?今でも愛し合える関係でしょ?僕たち」
「…っ…は?何言って、男同士だぞ」
「それ、差別だから。性別なんて関係ない!僕はずっと、たっくんのこと好きで、今でもそれが忘れられなくて、今日たっくんを見つけて、心の底から嬉しかったのに」
「今でも好きって、本気なのかよ…」
「そうだよ、本気。たっくんの事が好きだったから、こっちに戻ってきたんだ。忘れられなくて、もしかしたら会えるかもって」