生きた証とは、形として残ることがすべてじゃない。

 人は人の心に刻まれることで、生きていたことが喜びになる。

 誰かの心の中で生き続けることが生きた意味になる。

 目を閉じると、彼女の姿がすぐに浮かぶ。

 艶やかな黒髪、少し照れた笑顔、透き通るような声。

 どれだけの時間が過ぎても、色あせることはない。

 あの日、あの時間、僕は確かに二度目の人生を生きていた。

 奇跡というには長く、幸せを感じるのには儚く、かけがえのない日々だった。

 僕は何度も、何度も、彼女と過ごしたあの日々を思い返す。

 彼女は、明るくて、前向きで、いつも笑顔を絶やさない。
 そして僕に夢を与えてくれた、太陽みたいな人、だった。

『ありがとう。都希くんのおかげで、私はすっごく幸せだよ。これからも、きっとそうなると思う』

 ねえ日向、君は今も幸せですか。

 僕は幸せだよ。

 そしてこの、幸せな人生の中に、君という大切な人がいたことを一生忘れない。